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ジュニアNISAは廃止される?|利用するメリットはない?


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2020年度の税制改正大綱で、「ジュニアNISA」は2023年の投資期限を延長せず廃止する案が出ました。

 

一般NISA」や「つみたてNISA」と比べて口座数が少ないことが「ジュニアNISA」の廃止案につながったようです。

 

「ジュニアNISA」は延長されない予定ですが、使えない制度というわけではありません。せっかくの非課税枠をミスミス逃す手はありません。

 

今回は、廃止予定である「ジュニアNISA」の活用方法について解説したいと思います。

 

1.「一般NISA」「つみたてNISA」は延長、「ジュニアNISA」は延長せず廃止へ

2020年度の税制改正大綱で、「一般NISA」や「つみたてNISA」は投資可能期間を延長する案が出ました。しかし、「ジュニアNISA」のみが延長されず、終了となる予定です。

 

「一般NISA」は1,161万口座、「つみたてNISA」は147万口座が開設されているのに対して、「ジュニアNISA」は32万口座しか開設されていません(2019年6月現在)。

ジュニアNISAの口座数が圧倒的に少ないのが分かります。後ほど解説しますが、使い勝手が悪いのが不人気の理由でしょう。

 

ジュニアNISAは延長されず、終了してしまう予定ですが、ジュニアNISAが全く使えない制度というわけではありません。

他のNISAの利用には20歳以上という年齢制限がありますので、20歳未満の方が非課税枠を活用するには、ジュニアNISAしかありません。

これからジュニアNISAの活用方法について解説したいと思います。

 

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2.ジュニアNISAとは?

ここで簡単にジュニアNISAについて解説したいと思います。

 

ジュニアNISA(未成年者少額投資非課税制度)とは、子供の将来に向けての資産形成をサポートする2016年にスタートした投資非課税制度です。

ジュニアNISAを「こどもNISA」と呼ぶ方がいますが、正式名はジュニアNISAです。

 

ジュニアNISAの対象者

ジュニアNISAの口座を開設できるのは、日本に住む0歳~19歳の未成年者ですが、実際に口座管理や運用を行うのは、親や祖父母などとなります。

ジュニアNISAが利用できる期間は、2016年から2023年までとなっています。


ジュニアNISAは、「一般NISA」の子ども版といった制度です。 

 

ジュニアNISAの非課税投資枠

ジュニアNISAも一般NISAと同様に、通常、株式や投資信託などの売却益や配当金・分配金にかかる20.315%の税金が非課税となります。

 

非課税投資枠は年間80万円であり、非課税期間は最長5年間です。非課税投資枠は最大400万円となります。

しかし、2023年で制度が終了する予定なので、今年から利用すると非課税投資枠は最大320万円となります。

 

ジュニアNISAで非課税となる対象商品は、上場株式株式投資信託ETF(上場投資信託)REIT(不動産投資信託)などです。

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3.教育資金の準備には、ジュニアNISAはおすすめできない?

ジュニアNISA不人気の最大の理由は、使い勝手の悪さです。

ジュニアNISAは、18歳になるまで口座からの払い出し制限があり、資金を引き出すには口座を廃止する必要があります。

 

教育資金の準備としてジュニアNISAを活用する場合、塾代などで、途中払い出しが必要になる可能性があります。しかし、ジュニアNISA口座から途中引き出しをする場合には、非課税だった過去の運用益の全てが課税対象(災害などやむを得ない場合に限り非課税で払い出し可能)となってしまいます。

 

ジュニアNISAには、上記のようなデメリットがあるため、教育資金の準備には活用しにくく、人気がないのでしょう。

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ジュニアNISAも途中払い出しが可能となる?

上記の通り、今までのジュニアNISAは途中払い出しができず、人気がなかったのですが、2020年度の税制改正大綱で払い出し制限を撤廃する案が出ています。

 

2023年のジュニアNISA制度廃止後である2024年1月1日以降は、18歳までの払い出し制限を撤廃し、非課税で途中払い出しが可能となる予定です。

ジュニアNISAも現状に比べれば使い勝手が良くなる予定です。

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4.生前贈与を利用したジュニアNISA活用法

現状では、教育資金の準備には使いづらいジュニアNISAですが、暦年贈与を利用した活用方法もあります。

 

全く手を付ける予定の無いお子さんのお金が残っていないでしょうか?

子供が成人してから渡すつもりのお金があるのであれば、それをジュニアNISAに入れて長期で運用するという活用方法があります。

 

例えば、お子さんが小さい頃から贈与を行っている方もいらっしゃるでしょう。また、お孫さんへ贈与されている方も多いと思います。

贈与したお金は無駄遣いせず、お子さんが大きくなってから使って欲しいという願いがあるのであれば、ジュニアNISAを活用するのも1つの方法です。

 

ジュニアNISAの年間非課税投資枠である80万円までの贈与であれば、贈与税の基礎控除(110万円)内なので、贈与税はかかりません

 

ジュニアNISA口座の管理は親や祖父母などが行うので、子供や孫によるムダ遣いが防げますし、18歳になるまで払い出し制限があるところが贈与したお金のムダ遣いを防ぐ壁になります。

仮に払い出し制限が撤廃されても、現金で置いておくよりもムダに使ってしまうことに抵抗があることは間違いありません。

 

贈与契約書などの準備は必要

贈与は贈与する側の「あげます」という意思表示に対して、受け取る側の「もらいます」という受諾が必要となります(民法第549条)。

よって、ジュニアNISAの運用資金を両親や祖父母が贈与する場合、贈与契約書などを準備して、贈与の事実が証明できるようにしておく必要があります。

贈与契約者記入見本

 (出典:埼玉りそな銀行

 

税務調査を受けた際に贈与の事実が証明できない場合、子供や孫に贈与したお金が相続財産に持ち戻しされる可能性があります。

 

両親や祖父母が贈与したお金で子供や孫を契約者として生命保険に加入する保険料贈与という方法がよく使われていますが、下記の国税庁事務連絡にあるように贈与は総合的に判断されます。

よって、ジュニアNISAの投資資金を贈与する場合にも注意が必要です。

 

参考:国税庁事務連絡(昭和58年9月)

被相続人の死亡又は生命保険契約の満期により保険金等を取得した場合若しくは保険事故は発生していないが保険料の負担者が死亡した場合において、当該生命保険又は当該生命保険に関する権利の課税に当たっては、それぞれの保険料の負担者からそれらを相続、遺贈又は贈与により取得したものとみなして、相続税又は贈与税を課税することとしている。

生命保険契約の締結に当たっては、生計を維持している父親等が契約者となり被保険者は父親等、受取人は子供等として、その保険料の支払いは父親等が負担しているというのが通例である。

このような場合には、保険料の支払いについて、父親等と子供達との間に贈与関係は生じないとして、相続税法の規定に基づき、保険事故発生時を課税時期としてとらえ、保険金を受け取った子供等に対して相続税又は贈与税を課税することとしている。

ところが、最近、保険料支払い能力のない子供等を契約者及び受取人として生命保険契約を父親等が締結し、その支払保険料については、父親等が子供等に現金を贈与し、その現金を保険料の支払いに充てるという事例が見受けられるようになった。

この場合の支払保険料の負担者の判定については、過去の保険料の支払資金は父親等から贈与を受けた現金を充てていた旨、子供等(納税者)から主張があった場合は、事実関係を検討の上、例えば、①毎年の贈与契約書、②過去の贈与税の申告書、③所得税の確定申告等における生命保険料控除の状況、④その他贈与の事実が認定できるものなどから贈与事実の心証が得られたものは、これを認めることとする。

なお、贈与契約書のひな型はググれば沢山出てきます。  

 

教育資金の贈与は贈与税の課税対象外

教育資金以外にジュニアNISA用の資金を贈与をしていたら、教育資金を渡したい時に贈与税がかかるのではないか、と心配される方がいるかもしれませんが、心配は無用です。

 

必要な額の教育資金をその都度贈与する場合は贈与額が110万円(贈与税の基礎控除)を超えても贈与税の課税対象にはならないので、ご安心ください。

 

ジュニアNISAでの積立投資も可能

ジュニアNISAも積立投資が可能なので、例えば、毎月6.6万円ずつを投資信託で積立投資し、子供が大きくなったら現金化するか、そのまま子供に管理させるという方法もあります。 

 

ジュニアNISA終了後、20歳まで非課税で運用可能

ジュニアNISAは非課税期間終了時に一般NISAと同様に翌年の非課税期間に運用資産を移すロールオーバーが可能ですが、2019年以降の非課税枠には、ロールオーバーをする翌年の非課税枠はありません。

 

2024年から2028年の年初においては、ロールオーバーする非課税枠はありませんが、「継続管理勘定」に所有する金融商品を移すことができます。「継続管理勘定」に資産を移せば、引き続き20歳まで非課税で運用を続けることができます

 

ただし、「継続管理勘定」では、金融資産の売却はできますが、新規の買い付けはできませんので、注意が必要です。

資金の追加はできなくても、20歳まで非課税で運用できるメリットは大きいです。

 

【20歳になる前にジュニアNISA制度が終了してしまう場合】

20歳になる前にジュニアNISA制度が終了してしまう場合

 

ジュニア制度が存続している間に20歳になる場合には、下図の通り「一般NISA」口座に保有資産を移管することが可能です。

 

【ジュニアNISA制度期間内に20歳になる場合】

ジュニアNISA制度期間内に20歳になる場合のイメージ図 (出典:金融庁HP

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まとめ

以前の記事でもご紹介しましたが、私も子供のためにジュニアNISAを活用しています。活用の目的は教育資金の準備ではありません

 

教育資金は別で積み立て、ジュニアNISAは子供が受け取ったお年玉や祖父母などから受け取ったお祝いなどの余剰資金を置いておく場所として活用しています。

子供が20歳になった時などに、子供に保有資産の管理を引き継ぎたいと思っています。

 

私の「ジュニアNISA」利用の目的は、子供のための資産形成と、資産運用の素晴らしさを子供に理解させることです。

資産運用の大切さを理解し、子供が大人になってからもコツコツと運用を続けて欲しいという願いを込めて、ジュニアNISAを利用しています。

 

今後、18歳までの払い出し制限が撤廃される可能性がありますので、ジュニアNISAの活用を検討されてはいかがでしょうか?

ジュニアNISAの非課税投資枠80万円は上限であって、最低100円からでも投資信託を積立投資できる証券会社もあります。