ネットや銀行の店舗で高金利が適用される定期預金の広告を見たことはないでしょうか?
年利7%もの高金利をうたっている広告もあります。
現在の大手都市銀行の普通預金金利は0.001%です。年利7%ということは7000倍。
実は、投資信託の購入とセットで定期預金に預け入れることで金利が最大7%になるのですが、本当にお得なのでしょうか?
どのようカラクリがあるのでしょうか?
本当にこの金利はお得なのかを検証するとともに、金融商品を購入する際に失敗しないためのポイントを解説したいと思います。
- 1.定期預金に適用される金利7%は3ヶ月程度
- 2.定期預金に金利7%が適用される条件とは?
- 3.なぜ、銀行は7%もの高金利を提供できるのか?
- 4.受け取る金利よりも支払う手数料の方が高い!?
- 5.金融商品の購入で大きな失敗をしないためのポイントとは?
- まとめ
1.定期預金に適用される金利7%は3ヶ月程度
広告やチラシに小さく記載されていますが、定期預金に適用される7%の特別金利は、預け入れ当初から3ヶ月間程度しか適用されません。
3ヶ月が過ぎれば、一般的な普通預金の金利が適用されます。
つまり、実際の年利では0.001%程度。
パッと見る限りでは、7%もの金利が長期間適用されると勘違いしてしまいそうですが、高金利は3ヶ月程度しか適用されない点に注意が必要です。
2.定期預金に金利7%が適用される条件とは?
ある銀行の定期預金に特別金利が適用されるには、下記の条件を満たす必要があります。
- 定期預金と投資信託の購入を合計で50万円以上
- 投資額(定期預金と投資信託の合計)の30%以上の投資信託を購入する
つまり、定期預金に特別金利が適用されるには投資額の30%以上の投資信託をセットで購入する必要があります。
例えば、100万円投資をするのであれば、70万円を定期預金、30万円を投資信託という配分。
なお、定期預金は元本保証ですが、投資信託は投資商品ですので元本は保証されません。
また、定期預金とセットで投資信託を購入すれば、必ず7%の金利が適用されるわけではありません。
投資信託に振り向ける資金の配分割合で適用される3ヶ月間の金利が異なります。
- 投資信託の割合が30%以上~50%未満 ⇒ 3%
- 投資信託の割合が50%以上~70%未満 ⇒ 5%
- 投資信託の割合が70%以上~100%未満 ⇒ 7%
7%の金利を得ようと思えば、投資信託に70%以上の資金を振り分ける必要があります。
3.なぜ、銀行は7%もの高金利を提供できるのか?
現在は、日本銀行(日銀)の金融緩和の影響で超低金利の状態です。
大手都市銀行の定期預金金利は0.002%程度、ネット銀行で金利が高いところでも0.2%程度が限度でしょう。
そのような状況の中、なぜ銀行は7%もの高金利を提示できるのでしょうか?
そのからくりは投資信託のセット販売にあります。
投資信託を購入する際には購入時手数料がかかります。更に投資信託を保有していると信託報酬という手数料も必要。
今回の事例でご紹介している銀行の定期預金とセットで販売されている投資信託は手数料が高いものが多く選定されています。
購入時手数料は高いもので3.24%。信託報酬の方は最高2.38%というものもラインナップ。
銀行は購入時手数料と信託報酬という2つの手数料で金利7%の費用を稼ぎ、更には利益を得ているというからくり。
次項で具体的に受け取る金利と支払う手数料の関係を解説したいと思います。
4.受け取る金利よりも支払う手数料の方が高い!?
定期預金と投資信託のセット商品で、得られる金利と支払う手数料の関係を下記の事例で検証してみたいと思います。
【事例】
購入金額:100万円
定期預金:70万円
投資信託:30万円
上記事例で得られる定期預金の金利は、下記の通りです。
70万円×3%×90/365=5,178円(税引前)、税引き後で4,127円。
一方、投資信託の購入によって支払う手数料を確認してみたいと思います。購入時手数料が3%、信託報酬が2%だと仮定。
購入時手数料:30万円×3%=9,000円
信託報酬:30万円×2%=6,000円
投資信託を購入した年の合計手数料は、15,000円(9,000+6,000)にもなります。受け取る金利の約3倍もの手数料を支払うことに。
銀行は、一見高い金利を提供しているように思えますが、実際には銀行が必ずもうかるような仕組み。
購入時手数料は購入時にしかかかりませんが、信託報酬は毎日支払うことになります。
定期預金に適用される金利は4ヶ月目からは0.001%程度となりますが、信託報酬は毎年2%ずつ支払う必要があります。
購入した投資信託で手数料に見合う運用成果が出れば問題ないですが、手数料が高いということと運用成果は必ずしも比例するものではありません。
場合によっては、運用結果がマイナスになる可能性もあります。
定期預金と投資信託のセット商品を検討する際には、上記のようなカラクリがあることを理解しておく必要があります。
退職金を狙ったて高金利の定期預金とファンドラップとの抱き合わせのプランもあるので注意が必要。
下記記事で解説しましたが、ファンドラップはデメリットも多く、おすすめできるような商品ではありません。
5.金融商品の購入で大きな失敗をしないためのポイントとは?
今回の事例を参考に金融商品の購入で大きな失敗をしないためのポイントを解説していと思います。
商品内容がよく分からないものは購入しない
金融商品は仕組みを複雑にするほど、一般消費者には内容がよく理解できなくなり、販売側が儲かるカラクリを仕込みやすくなります。
よって、商品内容が理解できないものは購入しない方が無難。
銀行や証券会社がすすめてきたからという理由だけで内容が理解できない金融商品を購入するのは避けるべきです。
リターンの相場を知る
下記記事でも解説しましたが、金融商品のリターンの相場を知ることが重要です。
現状、定期預金の金利は最高でも年利0.2%程度。
しかし、今回の事例では年利7%という世間の相場からかけ離れたリターンが提示されています。
一般的な相場からリターンがかけ離れている金融商品には何かカラクリがあると思って間違いありません。
また、投資詐欺の可能性もあるので、元本保証で高金利などといった提案には注意する必要があります。
まとめ
今回の事例で考えると、定期預金と投資信託のセットは、おすすめできる商品ではありません。
受け取る金利に対して支払う手数料が高すぎて見合っていません。3ヶ月程度の高金利を得るために手数料が高い投資信託を購入する必要はありません。
特別金利ばかり強調されていますが、最終的には銀行が儲かるように設計されている商品です。
投資信託を購入するのであれば、わざわざ銀行が選定した手数料の高いものを選ぶ必要はありません。
実は、今回の事例でご紹介した銀行の「つみたてNISA」用の投資信託には、購入時手数料がゼロのノーロードの商品もありますし、信託報酬が0.5%以下のものもあります。
極端に他のものより条件の良い投資商品は、どんなカラクリがあるのかをよく吟味する必要があります。
そして、よく分からない金融商品には手を出さないということが大切。
特に退職金などのまとまった金額のお金を受け取ったばかりの人は、せっかくの大金を運用しないともったいないという気持ちになり、今回解説したような商品に手を出してしまいがち。
更に失敗すると、運用で取り戻そうと考える人もいて、かえって損失を広げてしまう方もいますので注意が必要です。