人生お金が全てではありませんが、お金が無ければ生きてはいけません。
しかし、お金に振り回される人生は避けたいもの。
お金に振り回される人生を避けるためには、お金の性質を知ることが重要。
実は、基本的に「お金」の価値は減り続けていく性質があります。
お金の性質を知り、お金に振り回されたくない方は参考にしてください。
お金の3つの機能とは?
お金には、下記3つの機能があります。
- 価値の保存機能
- 交換機能
- 価値の尺度機能
①価値の保存機能
お金の名目価値は変化しません。お金を銀行に預ける、金庫にしまうなどして、持ち続けていれば富を蓄えられます。
②交換機能(決済機能)
物々交換の経済では、お魚を持っている人がお肉を欲しいと思っても、お肉を持っている人がお魚を欲しくなければ交換は成立しません。しかしお金とならお魚、お肉を交換(決済)できます。これにより「お魚とお肉を交換してもよい」と、両者の欲求が一致する必要はなくなります。お金は交換の媒介として機能を持っています。
③価値の尺度機能
世の中で販売されている食べ物やサービスにはすべて値段がついています。一般的に値段の高い商品やサービスほど、私たちが感じる値打ちも高くなります。例えばお寿司1カン100円か、1カン1万円では、後者の価値が高く感じます。このように商品やサービスの値打ち、価値を決める物差しとしての働きがあります。
(出典:全国銀行協会)
上記のうち、価値の保存機能については注意が必要。
「お金」は名目価値は変化しなくても、実質的価値は変化する可能性があるから。
例えば、銀行に500万円を預金すれば、500万円とその利息は保証され、30年経った場合でも最低500万円は引き出しが可能。
しかし、現在の500万円と30年後の500万円の価値は同じではない可能性があります。
その理由は物価が変動するから。
仮に、インフレで物価が上がり続けることがあれば、現在500万円で買えるものが30年後には1,000万円を出さなければ買えなくなっている可能性があります。
つまり、500万円の名目価値は変化しなくても、物価の変動を考慮した実質的価値は変化する可能性があるということです。
インフレとデフレはどちらがいい?
日本全体の経済を考えた時、インフレとデフレはどちらがいいのでしょうか?
インフレ(インフレーション)とは、モノやサービスの値段(物価)が上がることによって、相対的に通貨(お金)の価値が下がることです。
デフレ(デフレーション)とは、モノやサービスの値段(物価)が下がることによって、相対的に通貨(お金)の価値が上がることです。
個人の感覚ではモノやサービスの値段(物価)が下がるデフレは有難く感じますが、日本全体の経済で考えるとマイナス。
デフレが進むと下記のようなデフレスパイラルが発生し、結果的には日本経済全体が悪い状態に陥ってしまう可能性があります。
商品が売れない
⇓
値下げする
⇓
企業の利益が減る
⇓
従業員の給与が減る
⇓
更に商品が売れなくなる
⇓
更に値下げする
⇓
更に企業の利益が減る
⇓
更に従業員の給与が減る
⇓
・・・以下、上記の繰り返し
モノの値段が安くなることは消費者1人ひとりにとってはいいことです。
しかし、日本国民全員が安くなるまでモノを買わなくなったら、上記のようなデフレスパイラルが発生し、結果的には日本経済全体が悪い状態に陥ってしまう。
これを合成の誤謬(ごうせいのごびゅう)といいます。
合成の誤謬とは、「個人が合理的な行動をとっても多くの人が同じ行動をとることによって、全体としては悪い状態になること」です。
日本銀行(日銀)の金融緩和政策の目的はインフレ率2%
上記の通り、デフレは経済を収縮させてしまうので、年2~3%程度のインフレが経済的には良いとされています。
世界の多くの中央銀行も年2%程度のインフレ率を目標に政策を決定。
現在の日本は非常に金利が低い状態が続いています。その理由は、日銀が金融緩和政策を行っているから。
その金融緩和政策の目的は、消費者物価の年2%上昇です。
つまり、日銀は日本で続くデフレを脱却するため、消費者物価の年2%上昇を目指して金融緩和を2013年から9年間も継続しています。
年2%の物価上昇で「お金」の価値は36年後に半減する
仮に年2%のインフレが起こるとすると、所有しているお金の価値は相対的に2%ずつ下がっていきます。
つまり、モノの値段(物価)が上がることによって、通貨(お金)の価値が相対的に目減りしていることになります。
日本人は特に元本保証が好きですが、元本保証は額面の保証であって、価値の保証ではありません。
額面は保証されても価値は変動します。
日銀の目標が達成されれば年率2%の物価上昇が起こる世の中になりますので、最低でも年2%を上回る運用益を上げないと所有している資産の価値が目減りすることに。
なお、年率2%の物価上昇が続けば約36年で物価は2倍になり、保有しているお金の実質的価値は半減します。
「老後2,000万円問題」が話題となっていますが、老後に向けて必死に貯金して2,000万円貯めて老後を迎えた時には物価が2倍になっていて、「老後4,000万円問題」に変わっていたということになる可能性もあります。
資産を守る意味でも資産運用が必要
国を継続的に発展させようと考えれば、経済成長が必要なことは誰にでもわかるでしょう。
持続的に国を豊かにするには、年2%程度のインフレが起こる経済状態を作り出す必要があります。
国が継続的に経済成長することを望むのであれば、その成長に伴って相対的に「お金」の価値は下がっていくという事実を知ることが重要。
価値が減る可能性が高いのであれば、全てを現金にしておくことはリスクが高い。
「お金」は価値が減っていく性質があるのであれば、お金をインフレに負けない「資産」に代える必要があります。
日本の実質賃金は下がり続けている
更に、物価上昇時に給料も上がればいいのですが、約30年間、日本の実質賃金は下がってきています。
物価が上がるのに給料の上昇が期待できないのであれば、保有している現金を「資産」に代えないと保有している「お金」の価値も目減りして、どんどん貧しくなってしまいます。
日本の実質賃金が上がらないのは政治の責任ではありますが、文句を言ったところで国は救ってくれません。
(出典:全労連)
日本ではスタグフレーションが起こりつつある
インフレは好景気の時だけでなく、原材料費などコストが上がることによっても起こります。
これをコストプッシュインフレといいますが、コストプッシュインフレは給与が増えない中で物価が上がるので、我々の生活は苦しくなります。
現状の日本では、原油の高騰や円安の進行でコストプッシュインフレが進んでいる状況。
インフレと同時に景気減速が進む「スタグフレーション」が発生しつつある状態です。
今の状況を変えるためには、国の政策を変える必要があり、選挙などで民意を示す必要があります。
しかし、すぐに国が変わるわけではありませんし、変わる保証もありません。
現状の日本の経済状態を考えると、個人ごとに自分の保有資産を守ることも重要。
具体的には、「お金」を株式や不動産などの「資産」に投資する必要があります。
この投資には資産を増やすだけでなく、守る意味もあります。
株式投資や不動産投資と聞くと難しく聞こえますが、インデックス投資でコツコツ積立投資をすることでも資産は守れます。
まとめ
デフレは個人には良くても一国の経済で考えるとマイナス。
よって、世界の多くの中央銀行も年2%程度のインフレ率を目標に政策を決定しています。
インフレによって物価が上がると、デフレとは逆で通貨(お金)の価値は下がってしまいますので、物価上昇率を上回る利回りで資産を運用できない場合、資産は実質的に目減りしてしまうことになります。
つまり、国を継続的に発展させようと考えれば、「お金」の価値は減り続けることになるということ。
よって、資産を守る意味でも「お金」をインフレに負けない「資産」に代える必要があります。
インフレやデフレについて理解すれば、資産運用の必要性が認識できます。
インフレやデフレについての知識は、最低限身に付けておくべき金融リテラシーの1つです。