物価高が続く日本で消費税を減税または廃止して欲しいと考えている方が増えています。
2023年11月に時事通信が実施した世論調査で消費税減税の賛否を尋ねたところ、「賛成」が57.7%、「反対」が22.3%、「どちらとも言えない・分からない」は20.0%という結果。
しかし、消費税を減税または廃止すると社会保障が削減されると思っている方は少なくないでしょう。
消費税は社会保障のために使われていると信じている方も多いはず。
しかし、その考え方は間違っています。
消費税に対して間違った認識を持っていると、生活苦という形で自分自身の首を絞めることになります。
そこで今回の記事では以下の本を参考に下記3点について解説します。
- 消費税は社会保障の財源なのか?
- 消費税を廃止するとどうなるのか?
- 消費税廃止の財源は?
消費税を廃止して欲しいけど社会保障のことを考えると無理では?と考えている方は参考にして下さい。
『日本が売られる 堤未果』
消費税は社会保障の財源なのか?
消費税は社会保障の財源だから増税する事はあっても減税や廃止する事はできないという話を聞くことがありますが、本当でしょうか?
実は、消費税は社会保障のためだけに使われている財源とはいえません。
その理由は、消費税は社会保障のためだけに使われる目的税ではなく、所得税や法人税と同じ普通税(一般税)だから。
【目的税とは?】
目的税は、税金の分類(租税の使途による区分)の一つで、その使途が特に定められている税金の総称をいいます。これは、特定の経費に充てるために課される租税を指し、具体的には、電源開発促進税や都市計画税、国民健康保険税、水利地益税などが挙げられます。
一方で、目的税に対して、使途を特定せず、一般経費に充てるために課される租税(その使途が特に定められていない税金)を「普通税(一般税)」と言います。
消費税が社会保障の財源というのであれば、所得税や法人税も社会保障の財源です。
消費税だけを社会保障の財源と声高に叫ぶのはおかしな話。
著者の堤さんは、消費税の引き上げ分は社会保障に回るのではなく、法人税減税分の穴埋めに使われているだけと指摘。
実際、下記のデータを確認すると堤さんの主張にも納得できます。
2022年度の税収は過去最高の71.1兆円。
基幹三税の税収内訳は所得税が22.5兆円、法人税が14.9兆円、消費税が23.1兆円で法人税が最も少額。
更に下図の通り、消費税は導入時の3.3兆円から20兆円超に増えた一方、法人税は約30年前と比べると減っています。
(出典:財務省)
基幹三税の比率を30年前から比較すると、下図の通り消費税の割合が倍増している一方、法人税の割合は小さくなっている。
(出典:財務省)
財務省のデータからも消費税が引き上げられた分、法人税が引き下げられてきたという主張には合理性があります。
消費税を廃止したらどうなる?
消費税を廃止するとどうなるのでしょうか?大変な事が起こるのでしょうか?
実は、消費税を廃止すると日本の景気が良くなります。
消費税は消費に対する罰金。モノやサービスを購入するごとに10%の罰金を取られているイメージ。
罰金(消費税)が課されれば、消費は抑制されます。
下図の通り消費は日本のGDPの約5割を占めます。
(出典:消費者庁)
消費税の廃止によって消費が盛り上がれば、日本のGDPは大きくなる。
GDPが大きくなれば所得税や法人税の税収も増えます。
次項で解説しますが、法人税を所得税のように累進化すれば消費税の廃止分を補える可能性もあるでしょう。
また、下記記事で解説しましたが消費税は雇用も不安定化させます。
消費税は最悪な税金で、日本弱体化装置といっても過言ではありません。
消費税を廃止すれば、賃金が上がるという形で雇用状況も改善するでしょう。
日本の消費税率は低い?
なお、諸外国の消費税は20%程度で日本の消費税10%は低いという議論がありますが、これもミスリード。
消費税が20%程度という諸外国でも食品などの生活必需品は税率ゼロ。
日本のように食品などの生活必需品にまで高い税率の消費税を課せば、消費が減退するのは明らか。
しかし、30年間も課税され続けてきた消費税を簡単に廃止できないだろうと思う方も多いでしょう。
消費税を廃止した国がある!?
実は、消費税を廃止した国があります。それがマレーシア。
本書にも2018年に当時92歳のマハティール首相が消費税を廃止した事例が紹介されています。
日本国民が正しい経済の知識を持った政治家を選べば、マレーシアのように消費税を廃止することも可能でしょう。
消費税廃止の財源は?|法人税の増税と国債発行
消費税を廃止するという話をすると、「財源はどこにあるのか?」と激怒する方がいます。
消費税を廃止する財源を税に求めるのであれば、法人税の増税と累進化が一つの選択肢。
法人税の増税と累進化により大企業が貯めこんだ内部留保を吐き出させて人件費の引き上げや設備投資に回させる意味でも法人税の引き上げが必要でしょう。
法人税を上げたら企業が海外に企業に出て行ってしまうという方がいますが、それも実際は違います。
内閣府が実施したアンケートによれば企業が海外に生産拠点を置く理由は「現地・進出先近隣国の需要が旺盛又は今後の拡大が見込まれる」が大きく、「現地の税制・融資等の優遇措置」との回答は極めて少数。
つまり、日本企業が海外に出る理由は、現地の需要拡大が見込まれるかが重要であり、日本の法人税が高いからではありません。
国債残高が増えると日本は財政破綻するのか?
なお、消費税廃止に法人税の増税は絶対条件ではありません。
財源は国債を発行すれば済む話です。
国債を発行し過ぎると日本は財政破綻するという方がいますが、日本が円建てで国債を発行している限り財政破綻(デフォルト)することはありません。
これは財務省のHPにも下記のように掲載されています。
『日・米など先進国の自国通貨建て国債のデフォルトは考えられない』
国(政府)には通貨発行権があるわけですから、円建ての国債であれば日本円を刷って返済することが可能です。よって、財政破綻(デフォルト)したくてもできません。
では、無尽蔵に国債を発行できるのかというと、それはできません。
国が供給能力(生産能力)を超えて財政出動を続ければ、需要過多で極端なインフレになってしまいます。
よって、債務残高ではなくインフレ率を目標に財政出動すべきです。
現状の日本であれば、3~4%程度のインフレ率になるまでは国債を発行して財政出動することが可能。
先述の通り、税収を増やしたかったら経済を成長させる必要があります。
税収を増やすために増税すれば景気が冷え込み税収が伸びない。
税収が伸びないからまた増税し、また景気が冷え込むという負のスパイラルを生みます。
実際、日本でバブル後の不景気が30年間も続いた理由は上記のような考えによる緊縮財政が大きな原因。
30年間も続いてきた負のスパイラルを断ち切らなければ、「失われた40年」が待っているでしょう。
国債発行による財政出動を経済活性化の呼び水にすれば、消費や設備投資を喚起する正のスパイラルが生まれます。
国債を発行し過ぎるとハイパーインフレになるという議論がありますが、無尽蔵に国債を発行しろといっているわけではありません。
経済が停滞している時は国債を発行して財政出動すべきといっているだけ。
そもそも、国債の発行が消費税廃止分の23兆円程度増えても日本のような生産能力のある先進国がハイパーインフレになることはありません。
まとめ
消費税は社会保障のためだけに使われているわけではありません。
よって、消費税を減税・廃止しても社会保障を削減する必要はありません。
下図の通り、消費税が増税されてきたにも関わらず、社会保障は削減されてきました。
(出典:全国商工新聞)
負担増なのに給付減という矛盾。民間企業であれば許されない暴挙を国(政府)は行っている状態。
現状、日本の政治は一部の特権階級だけを豊かにする政策が行われています。
そのような政治から脱却する必要がありますが、特権階級だけが豊かになる政治を行う政治家を選んでいるのは我々国民。
実は、我々国民が自らを苦しめる政治家を選んでしまっているということ。
我々国民が政治に無関心のままだと残念ながら「失われた30年」が「失われた40年」になるのは確定的。
今だけ金だけ自分だけの政治家を極力排除して、政治を浄化しないと日本に未来はありません。
逆に国民の一定数が政治に関心を持ち正しい政策が行われるようになれば、日本経済を復活させることはできます。
今ならまだ間に合いますが、残された時間がどんどん少なくなっていることは間違いありません。
『日本が売られる 堤未果』