「財界総理」と称される経団連会長が十倉 雅和氏(住友化学会長)から筒井 義信氏(日本生命保険取締役)に代わりました。
十倉前会長は消費税を増税すべきという議論を展開していましたが、新しい会長も消費税減税には反対。
日本経済新聞の記事では、減税どころか財政健全化に力を入れろという内容の発言をしています。
国民が物価高に苦しむ中、なぜ経団連の会長は減税に反対するのでしょうか?
今回の記事では、日経記事での筒井会長の発言をもとに経団連が消費税減税に反対する理由について解説します。
「消費税は減税・廃止すべきだと!」と思っている方は参考にしてください。
経団連会長はザイム真理教の信者
まずは、筒井会長の日経記事内での発言について確認したいと思います。
日経の記事によると筒井会長は、完全にザイム真理教の信者だということがわかります。
まず、米国債の格付けが下げられたことについて下記のように発言しています。
ムーディーズ・レーティングスが5月に格下げし、米国債は最上位から陥落した。金融市場は大きく反応しなかったが、注意すべきだ。むしろ日本が他山の石とすべきだ、ととらえている。様々な政策を打つときに財政健全化の考え方が基調として流れているかどうかを世界は見ている。
(出典:日本経済新聞)
日本の国債も格付けが下げられないように財政健全化が重要と言いたいのでしょう。
そもそも格付けとは、債券の元利金支払いの確実性を格付け会社が評価し、その信用度をランク付けしたもの。
よって、デフォルト(債務不履行)の可能性が高まればランクを下げられるわけです。
しかし、米国や日本など自国通貨建ての国債を発行している国のデフォルト(債務不履行)はあり得ません。
例えば、日本円建てで発行している国債であれば、日本円を刷って返せばいいから。
実際、2013年に麻生太郎財務相(当時)が下記のように発言しています。
「日本は自国通貨で国債を発行している。(お札=日銀券を)刷って返せばいい。簡単だろ」
また、財務省のサイトにも下記のように掲載されています。
『日・米など先進国の自国通貨建て国債のデフォルトは考えられない』
つまり、自国通貨建ての国債に対しての格付けなどは無意味なのです。
また、筒井会長は消費税に関して下記のように発言しています。
消費税は社会保障の財源として根幹をなす財源だ。今の段階で減税するのは適切ではない。
(中略)
消費減税は結果的に次世代に負担を残すことになりかない。
消費税は一般財源で、社会保障の目的税ではありません。
お金に色はなく、消費税が社会保障の財源として使われているとは言えません。
これも財務省自身が国会の答弁で認めています。
経団連の会長には、ザイム真理教に洗脳されているか、洗脳されていなくても魂を売った人間しかなれないのでしょう。
次項以降で経団連が消費税減税に反対する2つの理由について解説します。
経団連が消費税減税に反対する理由①:輸出還付金
消費税は社会保障に使われるどころか輸出企業に還付されています。
輸出大企業が消費税の還付金を受け取れるカラクリは以下の通り。
企業が消費税を納税する際、自社の売上時に受け取った消費税額(売上税額)から自社が仕入れなどで支払った消費税額を差し引いた分を納税します。
この仕組みを仕入税額控除といいます。
下図のように受け取った消費税が300円、支払った消費税がで100円であれば納税する消費税は差し引き200円。
(出典:freee)
輸出企業の場合、海外での売り上げは消費税が受け取れないので仕入時に支払った消費税が還付される仕組み。
下図の通り、トヨタ自動車をはじめ日本を代表する輸出大企業10社に還付される額はなんと1兆2千億円余り(2020年度)。
トヨタなどの輸出大企業がある地域の税務署は、消費税の税収が赤字になっています。
(出典:全国商工団体連合会)
還付金の総額はなんと年間7兆5千億円程度。
消費税収は23兆円程度なので約25%が還付金に使われている計算。
消費者や中小企業が消費税の支払いに苦しんでいる中、輸出大企業は莫大な還付金を受け取っている。
更に円安による輸入品の値上げで消費者や中小企業は青色吐息ですが、輸出企業は莫大な為替差益を出している状態。
更に国内売り上げ分に関しても、中小企業と異なり大企業は消費税を転嫁しやすいので、消費税が増税されても全く問題ありません。
大企業の代弁者である経団連が消費税増税(19%)を主張する理由がここにあります。
経団連が消費税減税に反対する理由②:消費税は法人税減税の穴埋めに使われている
消費税の引き上げ分は社会保障に回るのではなく、法人税減税分の穴埋めに使われているだけとも指摘されています。
もともと消費税は直間比率(税収に占める直接税と間接税の割合)の是正を目的に導入されました。
実際、消費税を増税する一方で法人税の税率は引き下げられてきました。
(出典:財務省)
財務省の以下のデータを確認すると、間接税とされている消費税収が大きく増えていることが確認できます。
2022年度の税収は71.1兆円。
基幹三税の税収内訳は所得税が22.5兆円、法人税が14.9兆円、消費税が23.1兆円で法人税が最も少額。
更に下図の通り、消費税は導入時の3.3兆円から20兆円超に増えた一方、法人税は約30年前と比べると減っています。
(出典:財務省)
法人税の税収に占める割合は平成元年の34.6%から令和5年の20.9%に下がっています。
逆に消費税の占める割合は6%から32.4%に激増。
財務省のデータからも消費税が引き上げられた分、法人税が引き下げられてきたという主張が裏付けされます。
逆進性(所得の低い人ほど負担が大きい傾向)の強い消費税が所得税や法人税よりも税収が多い。
その結果が約30年も実質賃金が上がらずに庶民が貧困化する一方、大企業は内部留保を600兆円もため込む(2023年度末)状況を生み出しています。
まとめ
経団連が消費税減税に反対する理由は、目先の利益を追うため。
その結果、日本は「失われた30年」を経験することになりました。
日本の大企業連合体が日本を衰退させるために活動するなど言語道断。
目先の利益を追うことを止めて経団連が掲げている使命に立ち返り、日本の発展向上に寄与するべきです。
その使命は、総合経済団体として、企業と企業を支える個人や地域の活力を引き出し、日本経済の自律的な発展と国民生活の向上に寄与することにあります。
(出典:日本経済団体連合会)
日本の内需が盛り上がれば、自動的に日本の大企業も利益が上がります。
トランプ関税で世界経済が混沌とする状況下、日本は1億人超という人口を活かして内需を刺激すべき。
経団連の力を使って日本の内需を刺激するような政策を政府に働きかけて欲しいところ。
経団連の会長になる方は、大企業の利益だけでなく日本経済の発展も考えられる度量を持って欲しいと思います。