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【最低賃金2025】過去最大の引き上げで日本経済は復活する?


8月4日、2025年度の最低賃金の目安が示されました。

 

全国加重平均で、額、引き上げ率ともに過去最大となりました。

 

昨今の悪性インフレを考えれば最低賃金の引き上げは喜ばしいこと。

 

しかし、最低賃金だけを引き上げても私たち庶民の生活はよくなりません。

 

それどころか、更に貧困化が加速する可能性すらあります。

 

今回の記事では、最低賃金の引き上げの下記ポイントについて解説します。

  • 中小企業に賃上げ余力はあるのか?
  • 「106万円の壁」により働き控えが加速する
  • 中小企業が賃上げできる経済環境を作る政策とは?

 

物価高の中、収入が増えずに苦しんでいる方は参考にしてください。

 

 

最低賃金の全国加重平均1,118円|中小企業に賃上げ余力はある?

8月4日、第71回中央最低賃金審議会で今年度の地域別最低賃金額改定の目安について答申が取りまとめられました。

 

全国加重平均で63円(6.0%)引き上げて1118円とされ、額、引き上げ率ともに過去最大となりました。

 

最低賃金の引き上げは地域によって異なりますが、例年どおり10月に順次適用される予定です。

 

なお、各都道府県の引上げ額の目安は下表の通り。

(出典:厚生労働省)

 

現在、最低賃金が最も低い秋田県(951円)でも目安通り引き上げられれば、1,015円(951+64)となり1,000円を超えます。

 

昨今の物価高を考慮すれば、最低賃金の引き上げは必須。

 

6月の実質賃金は1.3%減で、6か月連続でマイナスの状態。

 

賃上げが物価高に追いつていない状況で、私たち一般庶民からすると働いても貧困化が止まらない感覚。

 

しかし、円安などで利益を上げている大企業はまだしも、中小零細企業に賃上げ余力はあるのでしょうか?

 

倒産件数が高水準で推移する中、人件費が増えることになれば中小零細企業で更に倒産が増える可能性があります。

 

日本では中小零細企業の従業員数が全体の約7割を占めています。

 

企業の倒産が増えれば、突然、仕事を奪われるケースも考えられるでしょう。

 

 

「106万円の壁」により働き控えが加速する

最低賃金を引き上げても「社会保険の壁」である「106万円の壁」があることで、働き控えが発生して人手不足が加速する可能性があります。

 

106万円の壁」とは年収が106万円を超えると社会保険(健康保険や厚生年金)の加入義務が発生する基準のこと。

 

具体的には下記の通り。

 

勤務時間や日数が一般社員の4分の3未満である短時間労働者(パート・アルバイト等)の場合、現在は下記のような条件で厚生年金健康保険に加入する必要があります。

  1. 1週間当たりの所定労働時間が20時間以上であること
  2. 1カ月当たりの賃金が88,000円以上であること
  3. 学生でないこと
  4. 従業員数が常時50人超の事業所(特定適用事業所)で働いている

 

上記の収入要件は月収8万8000円以上ですが年換算で106万円弱なので「106万円の壁」と呼ばれています。

 

年収が106万円を超えると社会保険への加入が必要となるので、そこに達する前に働くことを控える人が出ます。

 

年間106万円であれば、全国加重平均の最低賃金1,118円で計算すると年間で約948時間。1ヶ月約79時間。週約20時間。

 

週5日勤務であれば1日あたり4時間しか働けません。

 

最低賃金引上げで働き控えが増えれば、更に日本の人手不足は加速します。

 

なお、今後、「106万円の壁」は撤廃される予定です。

 

しかし、「106万円の壁」撤廃はいいことではありません。

 

下記記事で解説した通り、「106万円の壁」を撤廃すれば更に働き控えが加速する可能性があります。

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中小企業が賃上げできる経済環境を作る政策とは?

国(政府)は減税より賃上げということで、2029年度までの5年間で年1%程度の実質ベースでの上昇を目指し、最低賃金は2020年代に全国平均で時給1500円を実現するとしています。

 

現在のような日本経済の状況では、中小零細企業の継続的な賃上げは難しいでしょう。

 

「賃上げ」を声高に叫ぶことが政治家の仕事ではありません

 

中小企業が賃上げできる状態にすることが重要。

 

そのために真っ先に行うべきなのが下記2つの政策です。

  • 消費税の廃止
  • 「社会保険の壁」引き上げ

 

消費税の廃止は賃上げにつながる

従業員の賃金や社会保険料は消費税においては経費にならないので、賃上げには大きなマイナス

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消費税が廃止されれば、賃上げの原資になります。

 

また、消費税が廃止されればインボイスの廃止も可能。

 

賃上げのために生産性を向上させろと言っておきながら、生産性を下げるようなインボイスを導入する。

 

国(政府)のやっていることは矛盾しているのです。

 

消費税の廃止により、賃金UPのインセンティブとなり、またインボイスを廃止することにより生産性も向上します。

 

消費税は社会保障の重要な財源などという詭弁を即刻止め、日本経済復活のために消費税は廃止すべきです。

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働き控えを防ぐために「社会保険の壁」引き上げが必須

働き控えが発生するような「年収の壁」や「社会保険の壁」は大幅に引き上げる必要があります。

 

前項で解説した「106万円の壁」は、最低でも年収の壁である「160万円」までの大幅な引き上げが必須

 

人手不足が問題であれば、働き控えを発生させている原因を除去すべき

 

移民の受け入れなどは、そのあとで行うこと。

 

対策の優先順位が逆転しているのです。

 

もはや、わざと人手不足を発生させて積極的に移民受け入れに舵を切ろうとしているように思えます。

 

 

まとめ

8月4日、第71回中央最低賃金審議会で、今年度の地域別最低賃金額改定の目安について答申が取りまとめられました。

 

全国加重平均で63円(6.0%)引き上げて1118円とされ、額、引き上げ率ともに過去最大となりました。

 

物価高に苦しむ一般庶民にとって賃上げは喜ばしいこと。

 

しかし、現在のような日本経済の状況下では、中小零細企業の継続的な賃上げは難しいでしょう。

 

政治家の仕事は声高に「賃上げ」を叫ぶことではありません

 

消費税の廃止や「社会保険の壁」を引き上げて、中小零細企業が継続的に賃上げできる経済状況を実現すべきです。