日経平均株価は2024年8月5日に4451円安と過去最大の下落幅を記録。
新NISAが開始されたことをきっかけに資産運用を始めた初心者の方は肝を冷やしたことでしょう。
資産運用を始めた途端に不安定な相場を経験した方の中には、投資を続ける自信がないと感じた方も少なくないはず。
国(政府)は「貯蓄から投資へ」を目指して「資産所得倍増」を声高に叫んでいますが、本当にそんなことが可能なのでしょうか?
私は、日本人全員が投資で資産を倍増できるとはとても思えません。
国(政府)が国民に対して、新NISAで資産所得を倍増させるという政策は行うべきではない思います。
今回の記事では、日経平均大暴落の原因と「資産所得倍増」計画はやめるべき3つの理由について解説します。
投資で老後資金が準備できるか不安に感じている方は参考にしてください。
日経平均大暴落の原因は?
2024年8月5日の日経平均株価は4451円安となり、史上最大の下げ幅を記録しました。
日経平均の大暴落は、いくつかの要因が重なり起こりました。
大きな要因の1つが日本銀行(日銀)の利上げ。
日銀は2024年7月31日の金融政策決定会合で政策金利を0.25%に引き上げることを決定。
また、植田総裁が年内追加利上げを示唆するタカ派の発言をしたことにより円高が進行。
もう1つの大きな要因が、米国経済が減速する兆しが見られたことで、アメリカのハイテク株が続落したこと。
更に、FRBによる早期利下げも想起されたことによって、ドル円が一時141円台と直近安値の161円台から20円以上円高に振れました。
上記のような要因が重なったことから日経平均株価は大暴落。
米国株安が世界に波及した「ブラックマンデー」翌日の1987年10月20日を上回り史上最大の下げ幅を記録することになりました。
オルカンの基準価額も大きく下落
日経平均株価だけでなく、新NISAで人気のファンド「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」(オルカン)も直近高値の基準価額27,282円から最大22,688円まで約17%も下落。
米国株安と円高という日本人にとってはダブルパンチを食らう形になりました。
私も30万円以上あった新NISAの評価益が全て吹っ飛び、マイナスに突入しました。
新NISAで資産所得倍増はやめるべき理由
日経平均株価が史上最大の下落を記録する中、新NISAをきっかけに投資を始めた多くの方は強い不安を感じたことでしょう。
「資産所得倍増」という国(政府)の考え方に疑問を感じた方も多いと思います。
私は、投資で所得を倍増させるという国(政府)の考え方はやめるべきだと考えます。
次項から「資産所得倍増」計画をやめるべき理由について下記3つの観点で解説します。
- 誰もが投資で成功できるわけではない
- 投資資金捻出のための節約により消費が減退する
- 海外株投資により円安が定着して物価高となる
①誰もが投資で成功できるわけではない
先述の通り、日経平均株価は8月5日に4451円安と過去最大の下落幅を記録。
しかし、8月6日は一転して3217円高と過去最大の上げ幅となるなど乱高下。
株式市場では、今回ほどではなくても常に乱高下が起きる可能性があります。
今回のような株価の乱高下が続いた場合、ストレスに耐えられる人がどれだけいるのでしょうか?
FPとして色々な方の相談を受けてきましたが、資産運用に向かない方も一定数存在します。
実際、倉田真由美さんの姪が『含み損を抱えて平静でいられるメンタルを持たない』ということでNISAを止めたそうです。
「おばちゃん、これどうやってやめたらいいと?」と聞かれたので教えた。何も分かってないのに、国のどんどんやれやれに乗せられて始めちゃってたようだ。額が大きくなくてよかった。
— 倉田真由美 (@kuratamagohan) August 5, 2024
今回の株価乱高下でNISAを続けるのが辛くなった方は少なくないでしょう。
私は、資産運用は人生をより豊かにするために行うものだと考えています。
しかし、現状の日本では最低限の老後資金を準備するために投資を行うことがマスト。
これは国(政府)の政策としては過酷。
老後不安から消費が停滞したり、少子化が加速することになります。
また、積立時の暴落は投資信託を安く買えるチャンスではありますが、資産の取り崩し時の株価暴落は悲惨。
資産寿命を縮めることになります。
例えば、2008年のリーマン・ショック時にはオルカンの連動指数であるMSCI全世界株指数(ACWI・円ベース)が5割ほど下落しまた。
オルカンを積み立ててきて、取り崩しフェーズに入った途端に5割も指数が下落したら大変です。
タイミングによっては、資産の取り崩し時に世界の株式市場が長期停滞するという方も出てくるでしょう。
そのような方を国(政府)は自己責任と切り捨てるのでしょうか。
②投資資金捻出のための節約により消費が減退する
日本の実質賃金は26ヶ月連続マイナスの状態。
物価の上昇に賃上げが追いついていない状況下で、投資に回す資金が潤沢という方はどれくらいいるのでしょうか。
新NISAへ投資資金を回すため節約しているという方も少なくないはず。
非課税枠を埋めるために消費を我慢して投資に回す人が増えれば、日本経済が更に停滞する可能性があります。
新NISAで収益が上がれば資産効果で消費が盛り上がるという方がいますが、投資資金が潤沢な一部の富裕層以外は時間がかかります。
一般的な方は月3~5万円程度の積立投資が限度ではないでしょうか。
そのような方達が積立投資の成果を実感するとしても10年程度の時間が必要になると思います。
また、そもそも老後資金が心配でNISAを始める方が大半なはず。
そのような方達が多少資産が増えたからといって消費を増やすでしょうか。
日本のGDPは消費が5割以上を占めます。
(出典:消費者庁)
その消費が落ち込めば経済にはマイナスの影響大。
今後もコストプッシュ型のインフレが続く可能性もあるので、更に消費が低迷する形で日本経済に大きな影響を与える可能性は否めません。
③海外株投資により円安が定着して物価高となる
新NISAでは海外株式型のファンド(投資信託)で運用する人が多いのは間違いないでしょう。
実際、2024年1月の資金流入額では「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」に約3400億円、「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」に約2000億円となっています。
成長投資枠(年240万円)を利用して1月に一括投資する人もいるとはいえ、上記2ファンドだけで一ヶ月に約5400億円もの資金が流入。
オルカンへの資金流入額は前月から3倍、前年同月比で8倍に膨らんでいます。
外国株式型の投資信託への投資が増えれば、円を売って外貨を買うオペレーションが発生するので円安要因となります。
今後も円安が定着すれば、輸入品が高くなる形で物価高となるコストプッシュ型の悪性インフレが継続。
また、円安は円の価値の毀損につながるので、キャピタルフライトが起こる可能性もあります。
キャピタルフライトにより更に円安が進行し、その円安により更なるキャピタルフライトが起こるという負のスパイラルが発生することもあり得るでしょう。
キャピタルフライトとは?
資金がある国から他の国に急に移動することを指す。
キャピタルフライトは、国内の不安定な政治・経済状況、通貨価値の急激な低下や資産価値の減少などが原因で起こる。
まとめ
新NISA自体はいい制度。
しかし、現状の日本で導入すべき制度ではありません。
日本経済が順調で多くの国民に余裕がある状態であれば、より豊かになるために資産運用を奨励するのはいいでしょう。
しかし、日本経済が停滞する中で最低限の老後資金を準備するために資産運用を全国民に半強制する国(政府)はまともだとは思えません。
更に、投資に失敗したら自己責任と切り捨てられるような社会になりつつあります。
私たち日本国民はそのような悲惨な社会を望んではいません。
現状の日本で行うべき政策は資産所得倍増ではなく資産倍増です。
新NISAのような制度を奨励するのは、多くの日本国民の給与が順調に上がって資産が倍増してからでも遅くはありません。