現在、日本では非常に金利が低い状態で、お金をどう運用するか悩んでいる方が多いでしょう。
実は、低金利で悩んでいるのは皆さんだけでなく、銀行も同じように低金利で収益が上がらず苦しんでいる状態。
そのような状況の中、いよいよ銀行預金に口座維持手数料を導入するという話が現実味を帯びてきました。
つまり、銀行にお金を預けていると手数料を取られ、お金が減るマイナス金利時代がくるかもしれません。
今回は銀行の口座維持手数料についてと、口座維持手数料が導入された場合の対処法について解説します。
1.口座維持手数料とは?|銀行預金でお金が減る?
銀行にお金を預ければ、そこに利子が付いて増えるというのが一般的な考え方であり、常識となっています。
現在の大手都市銀行の普通預金金利は、0.001%程度で100万円を預金しても年間の利子は10円(税引き前)しか付きません。
しかし、銀行預金にお金を入れれば少しとはいえ、お金は増えるわけです。
その常識が変わるかもしれません。
口座維持手数料とは、銀行が預金者から口座を維持するための費用を徴収する手数料。
口座維持手数料を徴収することになれば、銀行にお金を預けるだけで手数料が取られるわけです。
つまり、金利よりも手数料の方が高ければ銀行にお金を預けると減ることになり、マイナス金利状態となってしまいます。
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2.なぜ、口座維持手数料が必要?
なぜ、口座維持手数料が導入される可能性があるのでしょうか?
それは、日本銀行(日銀)によるマイナス金利政策が影響しています。
マイナス金利政策とは、銀行が日銀に預ける当座預金の一部にマイナス金利を適用するもので、銀行のお金を融資などに振り向けさせ、経済の活性化を狙う政策。
マイナス金利政策は日銀による金融緩和政策の1つで、現状、銀行の貸出金利も低金利が常態化し、銀行の収益力が低下しています。
では、日銀が金融緩和を止めればいいではないか、と思われるでしょう。
しかし、新型コロナの影響もあり、2013年から一度も日銀が目標とする消費者物価上昇率2%を達成できず、金融緩和政策をやめられる状況にはありません。
更に世界的に金利が上がりにくい中で、日銀が金融緩和に後ろ向きな姿勢を示せば、為替が一気に円高方向に振れる可能性があります。
日本経済は輸出業者が支えている面があるため、円高はマイナス。
円高が進めば、日本の株式市場は大幅に下落し、日本経済が大失速する可能性があります。
つまり、日銀は金融緩和を止められる状況にはなく、更に銀行の収益が悪化する可能性があります。
銀行の収益が落ちている中、預金者から口座管理維持手数料を徴収する案が現実味を帯びてきています。
冷静に考えてみると、銀行が預金口座を維持管理するのにもお金がかかることが理解できます。
ATMの設置・維持費用、店舗の維持費用、人件費などなど、考えれば結構な費用がかかる。
銀行が預金者から集めたお金を貸し出して儲かっている間は、収益から口座維持の費用を賄い無料にすることができます。
更に預金者に金利を払うことにより、更に預金が集まり、銀行がより儲かる好循環が生まれます。
しかし、現在のように貸し出し金利が下がると、銀行が収益を上げることは難しくなります。
収益が下がっても、ATMの設置・維持費用、店舗の維持費用、人件費などが減ることはないので、銀行経営は厳しくなるでしょう。
地方銀行は特に厳しく、今後10年間で地方銀行の6割は赤字になるともいわれています。
店舗の統廃合など、銀行としても色々と手を打ってはいますが、これ以上の合理化は難しくなってきているのが現状なのでしょう。
実際に個人の預金者にマイナス金利を適用するとなると非常に影響が大きく、銀行にとっては口座維持管理手数料の徴収は最終手段となるでしょう。
影響が大き過ぎて、預金者へのマイナス金利は適用できないかもしれません。
しかし、現在の銀行の窮状と個人預金者にもマイナス金利が適用される可能性がある点は認識し、準備をしておく必要があります。
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3.マイナス金利時代はタンス預金が増える?
銀行に預けているお金にマイナス金利が適用されるならば、タンス預金が増える可能性があります。
以前、マイナンバー制度の導入と日本銀行(日銀)が銀行にマイナス金利を適用したことをきっかけに金庫がバカ売れしたことがありました。
今後、更にタンス預金を考える人が増えるかもしれませんが、私は、タンス預金は賢明な選択だとは思えません。
なぜなら、タンス預金は金利が付かないだけでなく、下記のようなリスクがあるからです。
・災害のリスク
タンス預金をすると、災害でお金を失ってしまうリスクがあります。
耐火金庫を買えば、火災でお金が燃えてしまうことは防げるかもしれません。
しかし、地震による津波や、最近多発している洪水などの水害はどうでしょう。
津波や洪水で金庫が流されてしまうリスクがあります。東北の大震災の際も、津波で多くの金庫が流されたようです。
災害でお金を失っても火災保険で補償されるのではないかと考える方もいるでしょう。
しかし、火災保険では災害による現金の損害は補償されません。
また、地震保険でも現金は補償対象外です。
つまり、豪雨による洪水で金庫が流されたり、地震による津波で金庫が流されると、火災保険や地震保険では現金は補償されません。
・盗難のリスク
タンス預金は盗難のリスクもあります。金庫ごと強盗に遭うという事件もあります。
実は、盗難でお金を盗られた場合、火災保険で補償されます。
しかし、盗難で補償される現金の上限額は30万円程度。
つまり、タンス預金として数百万、数千万というお金を自宅に保管しておくと、盗難の面でも非常にリスクが高いということが分かります。
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・インフレのリスク
タンス預金として現金を手元に置いておけば、額面は減ることはありません。つまり、元本保証。
しかし、お金の価値は変動。
インフレで物価が上がれば、相対的にお金の価値は下がります。
タンス預金は額面が減ることはありませんが、増えることもありませんので、インフレになった場合には実質的に資産を減らすことになってしまいます。
日銀が物価上昇2%を目標にしているのであれば、2%を超える利回りで運用する必要あります。
物価上昇率以上の利回りで運用できなければ、額面は減ってなくても実質的に資産は目減りすることとなります。
4.口座維持手数料(マイナス金利)を回避する方法とは?
口座維持手数料を回避するためには下記のような方法があります。
銀行口座の整理とインターネット銀行の活用
日本全国の金融機関にある個人預金口座数は合計で約11億あるといわれています。
国民一人あたり約10口座を所有していることになります。
普段、ほとんど利用していない口座は各種手数料を徴収される前に解約し、整理すべきでしょう。
また、インターネット銀行の活用も有効な方法。
インターネット銀行は、大手都市銀行などと比べて店舗が少ないなどの理由で経費を抑えられるため、大手銀行で「口座維持手数料」が導入される流れになっても、ネット銀行では導入されない可能性があります。
個人向け国債の活用
現金として手元に置いておいてもリスクがあるのであれば、ある程度のリスクをとって資産運用を行うことも必要でしょう。
しかし、どうしても元本割れを避けたお金もあると思います。
例えば、子供の教育費としてまとまった金額の定期預金があり、数年間は使う予定がないといった場合など。
数年間は使う予定のないお金があり、どうしても元本割れを避けたい場合は、個人向け国債(変動10年)が選択肢となるでしょう。
個人向け国債(変動10年)であれば、1万円から購入でき、購入してから1年が経過すれば換金可能です。
換金時に直近2回分の利子は差し引かれますが、受け取った直近2回分の利子を返すだけなので、元本割れをすることはありません。
また、個人向け国債(変動10年)は変動金利を採用しています。市場の金利の動きに応じて適用される利率が半年ごとに変動。
よって、市場金利が上昇すれば、受け取れる利金も増えることになりますので、インフレへの備えにもなります。
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まとめ
口座維持手数料の導入は日本では反発が強く、導入される可能性は低いかもしれません。
また、ヨーロッパの国のように口座維持手数料がかかるのは、残高1億円以上の預金者だけなど、一定の配慮がされる可能性があります。
普段、公共料金などの引落用として使っているような口座には口座維持手数料がかかることはないかもしれませんが、定期預金にまとまったお金を預けている方に関しては、口座維持手数料がかかる時代がくるかもしれません。
よって、マイナス金利が適用される時代がくる可能性があることを知り、あらかじめ自分の資産をどこに預けておくべきかを考えておく必要はあるでしょう。
日本人はタンス預金が好きなので、口座維持手数料が導入されることになれば、タンス預金が増えるかもしれません。
しかし、上記の通り、タンス預金は非常にリスクが高いことは認識しておいて頂きたいと思います。