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【証券口座乗っ取り被害】ネット証券の補償方法は?


ネット証券などで不正アクセスにより顧客の資産が勝手に売却され、その資金で見知らぬ中国株などが購入されるという被害が今年の3月以降に急増。

 

金融庁によると6月までに確認された不正取引の累計件数が7139件、売買額が5710億円になりました。

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対面の大手証券会社は不正取引の被害に対する補償方針を表明。

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ネット証券の補償方針について注目されていましたが、対面証券会社とは異なる方法で補償する見通しとのこと。

 

証券口座乗っ取りは他人ごとではなく、証券会社の補償方針を気にしていた方も少なくないでしょう。

 

今回の記事では、報道されたネット証券の詐欺被害に対する補償方針について解説します。

 

詐欺被害について明日は我が身と心配している方は参考にしてください。

 

 

ネット証券の補償方法とは?

ネット証券のSBI証券楽天証券は証券口座の乗っ取り事件を巡り、被害を受けた顧客に金銭で補償する方針を決めました。

 

原則、被害額の2分の1を補償する方針。

 

不正に買われた株式で発生した損失額の半分を金銭で返すことを原則にし、もともと持っていた株が売られた分は損失算定の対象にせず手数料を補償。

 

また、SBI証券と楽天証券は全被害者に一律で1万円の見舞金も渡すとのこと。

 

SBI証券と楽天証券は近く顧客へ補償の方針を伝えるようです。

 

次項の通り、野村証券など対面大手は不正に取引された株を元通りにする原状回復で補償する方針。

 

ネット証券と対面証券で対応が分かれることになります。

 

 

対面証券の補償方法とは?

不正取引の被害にあった顧客への補償をめぐって、大手証券5社は被害にあった顧客の口座の状態を不正売買の前に戻す原状回復措置を講じる方針を示しています。

 

不正アクセスによって売却された株を証券会社が市場などで改めて調達して顧客の口座に戻し、買われた株は口座から取り除く形で補償します。

 

原状回復措置を講じる方針を示している大手証券5社は下記の通り。

  • 野村証券
  • 大和証券
  • SMBC日興証券
  • 三菱UFJモルガン・スタンレー証券
  • みずほ証券

 

現状回復措置の条件は、パスワード(PW)を他人に伝えるなど顧客に過失がないこと。

 

口座乗っ取りの原因が顧客の過失にあると判断した場合は、状況に応じて被害算定額から一定割合を引いた額を金銭で補償。

 

金銭補償を無しにするケースもあるようです。

 

なお、原状回復措置は足元で発生している一連の口座乗っ取り被害を対象としたもので、将来にわたって同様の措置を約束するわけではないとしています。

 

野村証券、大和証券、SMBC日興証券、三菱UFJモルガン・スタンレー証券の各社は既に被害顧客とのやりとりを始めているようです。

 

 

対面とネット証券で補償方法に違いが出た理由

対面の大手証券会社は、被害にあった顧客の口座の状態を不正売買の前に戻す原状回復する方針を早々に決定。

 

一方、ネット証券は補償方法を決めるのに時間がかかったうえに金銭で被害額の2分の1を補償する方針。

 

なぜ、補償方法の違いが発生したのでしょうか?

 

理由の一つがネット証券の被害の大きさ。

 

被害のピークだった4月までの計4000件ほどの不正取引のうち、3000件程度はSBI証券と楽天証券、野村証券だったもよう。

 

また、対面の大手証券会社と比較して人手が少ないのも理由の一つ。

 

自己売買に基づく市場部門が充実している対面証券は市場で株を調達し、被害者の口座に戻すことが可能。

 

しかし、人員が限られるネット証券は難しく、原状回復は現実的ではありません。

 

更に担当の営業員がつく対面証券に比べて相対的に強い自己責任に基づいてきたのがネット証券。

 

契約の約款でフィッシングなどによるパスワード流出による不正取引は補償の対象外としてきた前提もあります。

 

国(政府)も補償を支援すべき

金融庁は証券会社に全額補償を基本と考えていたようですが、そうであれば国(政府)も補償を支援すべき

 

資産所得倍増計画などという間抜けな方針を決めたのは国(政府)

 

その間抜けな方針に従って証券会社や多くの国民が動いた結果、発生したのが今回の口座乗っ取り被害。

 

国(政府)にも詐欺被害が発生した責任があると考えるのは私だけでしょうか。

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新NISAが始まった2024年1月からの1年間で開設された非課税口座数は、ネット5社が対面5社の約20倍に上るとのこと。

 

ネット証券でNISA口座を開設した投資初心者の投資額は、月数万円程度の積立投資が大半でしょう。

 

手数料(信託報酬)が年0.1%を切っているオルカンやS&P500の積立では証券会社は儲からない。

 

一方でシステム開発や維持、更にセキュリティー対策には莫大な費用が掛かります

 

そのようなネット証券に詐欺被害の全額補償を強要するのは酷というものです。

 

国(政府)が老後不安を煽ったことにより、マネーリテラシーもネットリテラシーも低い国民が大量に株式市場に流入しました。

 

詐欺集団からしてみれば、大量のカモがネギを背負っている状態。

 

国(政府)も補償の支援を検討するべきでしょう。

 

 

まとめ

ネット証券のSBI証券と楽天証券は証券口座の乗っ取り事件を巡り、被害を受けた顧客に金銭で補償する方針を決めました。

 

原則、被害額の2分の1を補償する方針。

 

不正に買われた株式で発生した損失額の半分を金銭で返すことを原則にし、もともと持っていた株が売られた分は損失算定の対象にせず手数料を補償。

 

被害が大きく人手が少ないネット証券に対面大手と同じ補償対応を求めるのは酷でしょう。

 

そもそも資産所得倍増計画などという間抜けな方針を決めたのは国(政府)

 

その間抜けな方針に従って証券会社や多くの国民が動いた結果、発生したのが今回の口座乗っ取り被害。

 

今回の不正取引被害に関しては顧客だけでなく、証券会社も被害者ともいえます。

 

金融庁がネット証券にも全額補償を求めるのであれば、国(政府)が補償の支援を検討するべきでしょう。