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【年率0.9%】円建て社債への投資をおすすめしない3つの理由


預金金利が低い状態が続く日本で、少しでも金利が高い商品を購入したいと探している方も少なくないでしょう。

 

下記のような社債を購入したいという相談を受けました。

  • 年利率:0.904%(税引き後0.72)
  • 期間:10年
  • 申込単位:100万円

 

上記のような社債が売り出された場合、投資しようと思うでしょうか。

 

結論から申し上げると、上記のような社債への投資はおすすめしません。

 

そこで今回は、円建て社債への投資をおすすめしない理由を解説したいと思います。

 

 

社債とは?

まずは、簡単に社債について解説したいと思います。

 

社債とは、企業が資金を集めるために発行する債券のことで、企業が投資家からお金を借りる際の借用書のようなものです。

 

債券とは、国や企業などの発行体が投資家から資金を借り入れる代わりに満期まで利子を支払い、満期には元本を返済する有価証券のこと。

 

国が発行する債券を国債、自治体が発行する債権を地方債、企業が発行する債券を社債と呼びます。

 

投資家は、社債の購入を通じて企業に資金を提供。

 

企業はその見返りとして満期までの期間、決められた利子の支払いを行います。

 

満期時には企業が破綻しない限り社債の額面金額が払い戻される仕組み。

 

最終的に投資家は当初投資した社債の額面金額と利子の両方を得ることができます。

 

 

円建て社債への投資をおすすめしない3つの理由

さて、冒頭の社債は下記の通り、年利率が0.9%と現状の日本で考えると金利が高いように思えます。

  • 年利率:0.904%(税引き後0.72)
  • 期間:10年
  • 申込単位:100万円

 

しかし、現状では円建て社債への投資はおすすめしません。

 

ここから、円建て社債への投資をおすすめしない理由について解説します。

 

低い金利で長期間固定される

低金利に慣れ切った日本人にとって年率0.9%という利金は高いように思えますが、決して高金利とはいえません。

 

その低い金利に10年間も資金を拘束されるのはいかがなものでしょうか。

 

今後の日本ではこれまでのように低金利が継続する可能性もあります。

 

しかし、約9年間も金融緩和政策を継続してきた日本銀行(日銀)の黒田総裁の任期は2023年4月で終了。

 

その後の日銀人事によっては、緩和政策を終了して日本でも金利上昇局面が訪れる可能性もあります。

 

下記記事で解説した通り、金利上昇局面での運用は変動金利の商品を選択するのが基本。

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低金利時に固定金利の商品を選択すると、金利上昇局面で収益を取り逃してしまいます。

 

市中金利が上がると債券価格は下がる

日本でも金利が上がるようになれば、社債を売って金利の高い商品に乗り換えればいいと考える方もいるでしょう。

 

しかし、社債は元本保証ではなく、途中で売却する際には価格が変動します。

 

債券価格と金利は逆の動きをします。

 

仮に世の中の金利が上がるとすれば、債券価格は下がるということ。

 

世の中の金利が上昇したからといって社債を売って他の高金利の商品に乗り換えようとすると、元本割れの可能性があります。

 

売却までに利子を受け取っていたとしても、その利子を含めて運用益がマイナスになるケースもあるでしょう。

 

インフレに負ける可能性

世の中の金利が上がっても、利子を受け取りながら社債の満期まで待てば額面金額が返ってくるから問題ないと思う方もいるでしょう。

 

しかし、満期までの10年間にインフレが進み続ければ、満期時に返ってくるお金の実質的価値は減ってしまいます

 

インフレが年2%で10年続けば、10年後の物価は1.22倍。

 

事例の社債投資では、10年後の資産は税引後で1.072倍にしかなりません。

 

この物価との差分だけ資産の実質的価値が目減りすることになります。

 

一見、差は小さいように思えますが、投資額が大きかったり、インフレ率が高い場合には小さな差ではありません。

 

長期デフレが当たり前だった日本でもインフレが進んでいます。

 

現状は海外の物価高や円安によるコストプッシュ型のインフレではありますが、どこでインフレが落ち着くかは誰にもわかりません。

 

今後もインフレが続く可能性がある状況下で金利の低い商品で運用を続けると、資産の実質的価値はどんどん目減りしていきます。

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金利上昇局面では個人向け国債(変動10年)がおすすめ

金利が上昇する局面では、株式などでの資産運用が1つの方法。

 

金利が上昇するような状況下では、資産価格も上がる傾向があります。

 

しかし、元本割れするような投資商品には手を出したくないという場合には、個人向け国債(変動10年)がおすすめです。

 

個人向け国債(変動10年)は、10年満期の個人向け国債。

 

半年毎に適用する利率が変わる「変動金利」を採用していて、適用利率は「基準金利×0.66」。

 

市場の金利の動きに応じて適用される利率が半年ごとに変動しますので、将来の金利上昇リスクにもある程度対応できます。

 

上記の通り、個人向け国債(変動10年)は市場金利が上がれば、受取利子も増えることになりますが、 逆に金利が下がった場合には、受取利子は下がりますので注意が必要です。

 

ただし、市場の金利が下がった場合でも年利0.05%は保証されます。

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まとめ

円建て社債への投資をおすすめしない理由は下記の通り。

  • 低い金利で長期間固定される
  • 世の中の金利が上がれば債券価格は下がる
  • インフレに負けるリスクがある

 

超低金利の日本で、長期間金利が固定される商品を購入するのはリスクがあります。

 

金利上昇局面がきた場合、収益を取り逃してしまいますし、インフレが続いた場合、資産の実質的価値はどんどん目減りしてしまいます。