公的年金の積立金運用は損失が大きく、赤字が続いているというイメージを持っている方も多いでしょう。
私も年金積立金の運用は損失続きで、年金給付にも影響するのではないかと勘違いしていた時期がありました。
年金積立金の運用が上手くいっていないため、年金制度には破たんリスクがあると勘違いしている方もいるかもしれません。
実は、公的年金の積立金の運用成績は好調。
積立金の運用損による年金制度の破たんリスクはありません。
今回は、公的年金の積立金運用の状況や年金支給への影響について解説します。
公的年金制度については、思い込みや勘違いも多いので、今回の記事で積立金運用に関して、正しい認識を持って頂ければと思います。
GPIFによる公的年金の積立金運用は損失が発生している?
公的年金の積立金を運用しているのは、国内最大級の機関投資家であるGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)。
年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)によると2021年第3四半期の運用損益が5兆4,372億円の黒字だったと発表されました。
7四半期連続のプラスで期間収益率は2.81%です。
2021年度第3四半期の運用状況の詳細については、以下の動画をご参照ください。
一方、2020年1月~3月期にはコロナショックの影響で大きな運用損17.7兆円を出したと話題になりました。
上記期間だけの確認だと、運用損が約17兆円と大きく、大丈夫なのかと心配になってしまいます。
ここから分かることは、短期の運用実績で判断はできないということ。
GPIFの運用実績は?
短期間の運用成績で年金積立金の運用状況を確認すると判断を見誤ります。
長期間でどの程度の運用成果になっているかを確認することが重要。
では、これまでのGPIFによる運用実績はどうなっているのでしょうか?
- 2021年12月末時点の運用資産額は199兆2518億円
- 市場運用を始めた2001年度からの累積収益額は107兆6319億円
市場運用を始めた2001年度からの収益率は+3.79%(年率)と、年金積立金の運用は好調で、現状では運用損による制度破たんの心配はありません。
GPIFのポートフォリオは?
好調を維持しているGPIFによる年金積立金は、どのようなポートフォリオ(運用商品の組み合わせ)で運用されているのでしょうか?
GPIFの現在のポートフォリオは下図の通り。
(出典:GPIF)
国内債券・外国債券・国内株式・外国株式の4資産に25%ずつ均等に配分するポートフォリオになっています。
年金積立金の運用による年金給付への影響は?
実は、年金給付の財源は保険料と国庫負担が大半で、積立金の比率は1割程度。
(出典:GPIF)
下記記事でも解説した通り、積立金の運用実績は年金の存続に大きな影響を与えません。
よって、仮に積立金の運用に失敗して大きな損失が発生したとしても、すぐに年金制度の破たんにつながることはありません。
マスコミ報道によるイメージに注意
マスコミなどが積立金の運用環境が悪い時だけ非難することから、年金積立金の運用は上手くいってないないイメージがないでしょうか。
年金積立金は国内外の株式や債券で運用されているので短期間の運用実績を切り取れば、マイナスの場合もあります。
しかし、重要なのは短期間で切り取られた部分の運用実績ではなく、長期で捉えた運用成果。
GPIFが短期的に大きな運用損を出したという見出しで年金不安を煽ると記事の注目度は上がるでしょう。
一方、運用実績が好調という記事は運用損を出した時に比べれば注目度は落ちるかもしれません。
運用成果が悪い時ばかり注目されると、年金不安を持つ方が増え、制度の信頼性が下がります。
年金保険料の未納者が増えてしまうかもしれません。
過度に煽られたマスコミの報道で公的年金制度を判断するのは避けるべき。
偏った情報を鵜呑みにしてしまうと、「公的年金の保険料を支払うのはムダ」という誤った判断をしてしまいます。
まとめ
年金積立金は短期的には運用成績がマイナスになることはあっても、長期的な運用実績は好調。
現状、積立金の運用が公的年金制度にマイナスのインパクトを与える可能性は非常に低い状態です。
マスコミの煽った報道には注意が必要。
報道する側が運用成果をどのように評価すべきか理解できていないことも考えられます。
過度に煽られた情報を鵜呑みにしてしまうと、「公的年金制度は破綻リスクが高いから保険料は払うだけムダ」という誤った判断をしてしまう可能性があります。
公的年金制度は老後生活を支える柱であることは間違いありません。
公的年金制度について偏った情報ではなく、正確な情報を得るようにして頂ければと思います。