年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の2022年4-6月(第1四半期)の運用収益率はマイナス1.91%となり、2四半期連続の赤字運用となったと8月5日に公表しました。
ネット記事などでは、2四半期連続赤字と衝撃的なタイトルが出ました。
記事のタイトルだけで判断すると、公的年金の積立金運用は不調で年金財政に悪影響を及ぼしているのではないかと考えてしまう方もいるでしょう。
実際、GPIFによる年金積立金の運用は不調で、公的年金には破綻のリスクがあると本気で信じている方もいます。
しかし、GPIFによる公的年金の積立金運用は非常に好調。
今回の記事では、GPIFによる積立金の運用は好調で、破綻リスクはないということについて解説します。
GPIFの運用収益が2四半期連続の赤字
年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の2022年4-6月(第1四半期)の運用収益率はマイナス1.91%、運用収益は3兆7501億円の赤字となりました。
2021年10-12月(第4四半期)の運用収益率もマイナス1.10%、運用収益は2兆2031億円の赤字で、2四半期連続の赤字運用となりました。
上記の2四半期(6ヶ月間)だけを切り出せば、運用収益の赤字は約6兆円。
6兆円もの巨額の赤字を出していて、年金財政は大丈夫なのかと心配になる方も少なくないでしょう。
しかし、これまでの運用実績を確認すれば、全く問題ないことが分かります。
資産運用は長期で考えることが重要。
個人で運用する場合も短期の評価損益を気にしているようでは、資産を増やすことはできません。
今回の赤字は米国やヨーロッパのインフレが進み、FRBなどによる利上げが始まって世界的に株価が急落した時期に当たります。
多少の損失が出るのは仕方がないことでしょう。
GPIFの運用実績は?
短期間の運用成績で年金積立金の運用状況を確認すると判断を見誤ります。
長期間でどの程度の運用成果になっているかを確認することが重要。
では、これまでのGPIFによる運用実績はどうなっているのでしょうか?
- 2022年度第1四半期末現在の運用資産額は193兆126億円
- 市場運用を始めた2001年度からの累積収益額は101兆6,787億円
市場運用を始めた2001年度からの収益率は+3.56%(年率)と、年金積立金の運用は好調で、現状では運用損による制度破たんの心配はありません。
インカムゲインの累積収益額は約43兆円
なお、累積収益額の中には累積43兆 3,523億円ものインカムゲイン(配当金や分配金)が含まれています。
累積収益額に占めるインカムゲインの割合はなんと40%超。
GPIFは得たインカムゲインを現金のまま保有せず再投資に回していますので、更なる複利効果も期待できます。
GPIFのポートフォリオは?
好調を維持しているGPIFによる年金積立金は、どのようなポートフォリオ(運用商品の組み合わせ)で運用されているのでしょうか?
GPIFの現在のポートフォリオは下図の通り。
(出典:GPIF)
国内債券・外国債券・国内株式・外国株式の4資産に25%ずつ均等に配分するポートフォリオになっています。
貴重な我々の公的年金保険料で日本株を買い支えているということを主張する方がいますが、全くの的外れ。
仮に、年金積立金をキャッシュのまま保有していたり、国内債券のみで運用していたと仮定したら、現在のような収益は上がっていません。
年金積立金の運用による年金給付への影響は?
実は、年金給付の財源は保険料と国庫負担が大半で、積立金の比率は1割程度。
(出典:GPIF)
下記記事でも解説した通り、積立金の運用実績は年金の存続に大きな影響を与えません。
よって、仮に積立金の運用に失敗して大きな損失が発生したとしても、すぐに年金制度の破たんにつながることはありません。
まとめ
年金積立金は短期的には運用成績がマイナスになることはあっても、長期的な運用実績は好調。
現状、積立金の運用が公的年金制度にマイナスのインパクトを与える可能性は非常に低い状態です。
マスコミの煽った報道には注意が必要。
報道する側が運用成果をどのように評価すべきか理解できていないことも考えられます。
過度に煽られた情報を鵜呑みにしてしまうと、「公的年金制度は破綻リスクが高いから保険料は払うだけムダ」という誤った判断をしてしまう可能性があります。
公的年金制度は老後生活を支える柱であることは間違いありません。
公的年金制度について偏った情報ではなく、正確な情報を得るようにして頂ければと思います。