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【NISA制度】投資上限引き上げや恒久化を要望へ|NISA改正で日本人は豊かになる?


先日、金融庁が2023年度の税制改正に向け、少額投資非課税制度NISA)の投資上限の引き上げや制度の恒久化を要望するというニュースが報道されました。

 

資産所得倍増プラン」を掲げる岸田政権はNISA制度の拡大を目玉施策と位置づけています。

 

今回の制度改正案でNISA制度の使い勝手がよくなり、日本国民の所得は増えて豊かになるのでしょうか?

 

そこで今回の記事では、下記ポイントについて解説します。

  • NISA制度の改正案の概要
  • NISA制度の改正で日本人の生活は豊かになるのか?

 

 

NISA(少額投資非課税制度)とは?

まずは簡単にNISA(少額投資非課税制度)について解説します。

 

NISA(少額投資非課税制度)とは、少額からの投資を促進するための非課税制度。

 

通常、株式や投資信託などの売却益や配当金・分配金には20.315%の税金がかかります。

 

しかし、NISA制度を活用すれば、株式や投資信託などの売却益や配当金・分配金が非課税となります。

 

現状、NISAには下記3つの制度があります。

  • 一般NISA
  • つみたてNISA
  • ジュニアNISA

各制度の詳細については、下記記事をご参照ください。

www.fpinv7.com

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NISA改正案のポイントは?

今回報道された税制改正要望案のポイントは下記の通りです。

 

なお、金融庁はNISA制度を「簡素で分かりやすく、使い勝手のよい制度」とすることを目的としているようです。

 

非課税枠を増やす

現在、一般NISAは年間120万円、つみたてNISAは年間40万円の非課税枠がありますが、その非課税枠を増やす案が出ています。

 

日本証券業協会は7月に英国の非課税投資制度「ISA」並みの上限額を提言として出しました。

  • 一般NISA:120万円 ⇒ 240万円
  • つみたてNISA:40万円 ⇒ 60万円

 

つみたてNISAと一般NISAの併用を前提としていて、年間の最大投資額は合計300万円になります。

 

なお、ジュニアNISAに関しては2023年に廃止予定です。

 

投資可能期間を恒久化

2014年から始まった「一般NISA」で投資できるのは23年まで、2024年から始まる「新NISA」も28年までという投資可能期間が決まっています。

 

また、2018年開始の「つみたてNISA」の投資可能期間は2042年までで、非課税の保有期間は最長で2061年まで。

 

上記の投資可能期間の恒久化が検討されています。

 

また、一般NISAは5年、つみたてNISAは20年という非課税期間の無期限化も検討されているようです。

 

つみたてNISAと一般NISAの併用

現在は、一般NISAかつみたてNISAのどちらかの制度を選ぶ必要があり、併用はできません。

 

この両制度を併用可能とする案が出ています。

 

両制度の併用が可能となれば、つみたてNISA制度で運用に慣れた後、一般NISA制度で個別株や米国ETFを購入するなどというコア・サテライト戦略が可能となります。

 

つみたてNISAの対象年齢を未成年に拡大

先述の通り、子ども名義の口座を開設して投資を行う「ジュニアNISA」が2023年末で廃止予定。

 

廃止されるジュニアNISAの受け皿として、つみたてNISAの対象年齢を現在の20歳以上から未成年者まで拡大する案も出ています。

 

上記の内容が全て採用されれば、現在よりもNISAは使い勝手の良い制度になることは間違いありません。

 

個人的には、下記2点を最優先で改正してもらいたいと思います。

  • つみたてNISAと一般NISAの併用を可能とする
  • NISA制度の恒久化

 

 

NISA制度の改正で日本人は豊かになる!?

「資産所得倍増プラン」を掲げる岸田政権が目玉施策と位置づけているNISA制度の拡大ですが、実現すれば日本人の生活は豊かになるでしょうか?

 

今回の改正案が通れば、NISA制度の使い勝手が良くなる事は間違いありません。

 

しかし、私はNISA制度の拡充だけでは日本人は豊かにはならないと考えます。

 

下記記事でも書きましたが、今の日本に必要なのは「資産所得倍増プラン」ではなく「所得倍増プランです。

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NISA制度を利用する日本人の割合は?

上記の通り、現在の日本に必要な政策は投資に回すタネ銭が増える所得倍増プラン

 

そもそも所得が伸び悩む中で、積極的に資産運用をしようとする人が増えるのでしょうか。

 

2022年3月末の証券会社のNISA総口座数は1,120万口座。

(出典:日本証券業協会

 

20歳以上の日本の人口が約1億人なので、NISA口座を保有している日本人の割合は11%ほど。

 

2022年3月末時点で、約9割の方がNISA口座さえ保有していません。

 

また、NISA口座のうち稼働している口座の割合は6割というデータがあるようです。

 

つまり、実際にNISA口座を活用している20歳以上の日本人の割合は約6.7%。

 

投資しない理由はいろいろとあると思いますが、利用者が6.7%しかない制度の拡充を目玉政策としても日本経済は復活しないでしょう。

 

今回の改正案は内容としてはいいと思いますが、日本社会全体の底上げをせずにNISA制度を拡充すれば、制度利用者はお金に余裕がある方に偏り、格差拡大を助長する事になります。

 

合成の誤謬|投資を喚起すれば景気は低迷する

更に、所得が増えない状態で投資を喚起すれば、景気の低迷を助長する可能性があります。

 

投資をするには原資であるタネ銭が必要。

 

所得が多ければ、余裕資金を運用に回すという形になりますが、収入が増えなければ、投資にお金を回すためには節約が必須。

 

多くの方が拡充されたNISA制度を利用するために節約すれば、消費が減退して景気が低迷する可能性もあります。

 

これは、まさに合成の誤謬

 

日本人一人ひとりとって、将来に備え節約して投資に力を入れるということは合理的なことで正しい選択です。

 

しかし、日本全体で考えた時には消費が減退して日本経済の低迷を助長してしまいます。

 

また、岸田政権はNISA制度の拡充により日本の株式市場活性化を狙っているようですが、投資資金は日本市場を素通りして海外市場に出ていってしまう可能性が高いでしょう。

 

私自身も日本市場に積極的に投資しようとは思っておらず、運用の中心は世界株式型の投資信託です。

 

多くの日本人が投資に目覚めて金融リテラシーが上がれば、投資資金は魅力の乏しい日本の株式市場には集まりません。

 

所得が増えない現状で日本人が投資に力を入れるようになれば、タネ銭を作るための節約で消費が減退して日本経済は低迷。

 

更に、投資資金は日本の株式市場を素通りして米国を中心とする世界の株式市場を活性化するというオチが待っているでしょう。

 

 

積極財政による日本全体の底上げこそ必要な政策

今の日本に真に必要な政策は、積極財政による日本全体の底上げ。

 

例えば、財源を国債として下記のような政策を実行するだけでも日本経済は大きく回復する可能性があります。

  • 消費税の廃止
  • 公的年金の拡充
  • 大学までの教育費無償化
  • 児童手当の増額 など

 

「資産所得倍増プラン」には政府はお金を使わず、「国民は自己責任で老後の準備をしろ」という緊縮財政的な考え方が根底にあります。

 

日本に必要なのは未来への希望

現在の日本では、「今年よりも来年は悪くなる可能性がある」という絶望的な考え方を持っている方が少なくないでしょう。

 

日本人が希望を失ってしまった原因は、バブル崩壊後に誤って続けられた緊縮財政政策

 

我々国民は、「このままでは日本は財政破綻する」といった誤った財政破綻論で洗脳されてきました。

 

しかし、日本円(自国通貨)で国債を発行している日本が財政破綻デフォルト)する可能性はないので財源問題はありません。

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正しい財政政策金融政策が行われれば、日本は力強く復活します

 

現状の日本に必要なのは、「今日よりも明日の方が良くなるだろう」と思える未来への希望。

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高齢になっても働き続けなければならない自己責任社会を望んでいる方がどれほどいるのでしょうか?

 

多くの方がある程度の年齢まで働けば、余生は年金でゆっくり過ごしたいと考えているのではないでしょうか?

 

資産運用はより豊かな人生を送るための手段であることは間違いありません。

 

しかし、資産運用をしていないとまともな老後も迎えられない自己責任論の蔓延した世の中は異常だと感じるのは私だけでしょうか。

 

国民の希望に耳を傾けず、自己責任社会を押し付ける政治家など不要。

 

日本人は1日も早く「このままでは日本が財政破綻してしまう」という洗脳から目覚め、正しい政策を行える政治家を選ぶべきです。

 

 

まとめ

今回、報道されたNISA拡充案は、良い内容ですので実際に改正される事を望みます。

 

しかし、現状の日本で本当に必要な政策は投資を喚起することでしょうか。

 

まずは、約30年間疲弊してきた日本経済を復活させ、日本人全体の所得が上がるような政策こそ必要ではないでしょうか。

 

今の日本に必要な事は、諦めの雰囲気を振り払う未来への希望

 

正しい政策が行われれば、豊かな日本を取り戻すことができます

 

そのためには、国民が財政破綻論という洗脳から目覚め、正しい政策を政治家に求めていく必要があります。

 

当ブログをここまで読まれるようなリテラシーの高い方にこそ正しい知識を持って頂き、周りの方に希望を拡散して頂きたいと思います。