防衛費の増額や異次元の少子化対策などに向けて岸田政権が増税を画策しているのは間違い無いでしょう。
日々増税に関する記事を目にしますが、増税するならまず議員の数を減らせという意見をよく耳にします。
政治家の中にも「議員定数を減らすべき」と主張している方がいます。
感情的には分かりますが、議員を減らせば増税を避ける事ができ、日本を豊かにする事ができるのでしょうか?
結論から申し上げると、国会議員を減らしたとしても増税は回避できませんし、日本が豊かになる事はありません。
今回の記事では、「国会議員は3割減らせる」という日経の下記記事を参考に解説したいと思います。
国会議員などを減らして増税を避けて欲しいと考えている方は参考にしてください。
- 国会議員を3割減らしても削減効果は誤差の範囲
- 議員定数が減れば少数の声は届かなくなる
- 痛みを伴う改革の結果が「失われた30年」
- 日本経済復活のために必要な政策とは?
- 日本の安定財源は自国通貨建ての国債
- まとめ
国会議員を3割減らしても削減効果は誤差の範囲
大阪府知事の吉村さんは、記事中で国会議員は3割減らせると発言しています。
「新興勢力が入ってくるのを嫌がり、自分の議席を守るのに必死な政治家の集団では生産性は向上しない。政治家自身も新陳代謝していかなくてはならない。国会も議員の定数や報酬の削減から始めるべきだ。維新が自民に取って代われば直ちに定数の3割削減を実行する」
政治家も新陳代謝が必要なのは同意しますが、国会議員の定数を減らせば生産性が向上するのでしょうか?
まず、国会議員を3割減らすとどのくらい予算が節約できるのかを確認してみたいと思います。
衆議院の定数は465名、参議院の定数は248名で合計713名です。この3割を減らすと214名。
国会議員の詳細な年収は分かりませんが、仮に3000万円とすると、議員を3割減らした場合の削減額は約64億円。
個人にとっては大きい額ですが、国の予算から考えれば誤差の範囲。
日本の予算は100兆円超なので、64億円を減らしたところで大きな影響はありません。
文書通信交通滞在費(文通費)の問題も同じ。
増税するのであれば、まず国会議員の定数や収入を減らせという気持ちが出るのも理解できます。
しかし、感情的になってはいけません。
ムダは削減すべきなので働かない議員には辞めてもらうべきですが、定数を一律3割減らすこととは意味が異なります。
論点を間違えるとムダな議論が発生してしまう。
日本が豊かになるかどうかが最も重要な論点であり、国会議員を一律減らすということが豊かな日本を実現することにはつながりません。
また、他の国と比べて国会議員の数が多いから減らせという論調がありますが、他の先進国と比べても日本の国会議員の数が多いということはありません。
(出典:図録▽国会議員数の国際比較)
議員の定数や年収を減らすのではなく、給与を国民の平均賃金に連動するようにすればどうでしょうか。
国税庁の民間給与実態調査(令和3年分)によれば、日本人の平均年収は443万円。
国会議員の年収は国民の平均年収の3倍などと決めておく。
国会議員が3000万円の年収が欲しければ、国民の平均年収を今の約2.5倍にする必要があります。
議員を一律減らすという考え方よりも日本経済が良くなる気がしないでしょうか。
待遇が保障されるから身の保身に走る。
国民が豊かになることによって議員たちも豊かになるようにすれば、国民のためになる仕事ととは何かを真剣に考えるようになるでしょう。
議員定数が減れば少数の声は届かなくなる
議員の数が減れば少数の国民の声が届きにくくなり、少数の声はかき消される可能性があります。
少数の声が届かなくなれば、間違っていても独裁的な政策がどんどん進んでいきます。
政治が常に正しい方向に進むことが保証されていればいいですが、間違った方向に突き進む可能性も否定できません。
幅広い意見が出る方が健全な状態ではないでしょうか。
日経の記事の中には下記のような一文があります。
大阪府議会は過去10年間で109の定数を79まで削減した。大阪市議会も2027年に予定する市議選から定数を現行の81から70へと減らす。賛否は分かれるものの「身を切る改革」を掲げる維新が推進した。
大阪府議会の議席数を確認すると大阪維新の会は53議席。
定数79に対して一党で53議席もあれば、大阪維新の会の思うがままになってしまいます。
大阪維新の会が常に大阪府民にとって正しい政策を行ってくれればいいですが、そんな保証はどこにもありません。
大阪都構想やIRなど、大阪府民にとって最良と思えないような政策でも数の力で押し切られてしまいます。
議員定数を減らせば、独裁的な政治が起こりやすくなってしまいます。
痛みを伴う改革の結果が「失われた30年」
吉村さんは下記のように話しています。
「維新は大阪府議会の定数を3割近く削減した。人口がどんどん減って改革すべき時に政治家が自分たちの身分を守っていては、痛みを伴う改革などできない。改革への本気度を示すリトマス試験紙になる」
現状でも多くの国民が痛みに苦しんでいませんか?これ以上の痛みを伴う改革を希望している人がいるのでしょうか?
少なくとも私は要りません。マゾではないので。
痛みを伴う改革、例えば増税や歳出削減を繰り返してきた結果、「失われた30年」という日本経済の長期低迷をもたらしました。
「人口がどんどん減って改革すべき時」と言いますが、馬鹿の一つ覚えのように改革を繰り返してきたから「人口がどんどん減ってきている」のです。
議員が身を切るから、国民も歳出削減や増税という形で身を切れという考え方では日本経済は復活するどころか更に低迷します。
いつまで思考停止状態で同じ愚を繰り返せば気が済むのでしょうか。
この30年間、痛みを伴う改革を実行してきて日本は豊かになりましたか?
これからの日本で改革を実行して豊かになると思いますか?
政治家だけでなく、国民も上記の問いに対して真剣に向き合う必要があります。
日本経済復活のために必要な政策とは?
現状の日本に必要な政策は痛みを伴う改革ではありません!
では、どのような政策が必要なのでしょうか。
現状の日本に必要な政策は積極財政。
政府の大胆な財政出動を呼び水として、個人や企業が積極的にお金を使う状況を作り出す必要があります。
行うべき政策の1つが、消費税の廃止です。
消費税を廃止して消費が増えれば、経済は活性化します。
経済が活性化して国内の需要が増えれば、企業は設備投資を増やすでしょう。
個人も企業もお金を使うようになれば、更に経済は活性化します。
上記のような好循環が発生すれば、企業は儲かるので従業員の給与も上がるでしょう。
多数の企業が儲かれば、多くの方の賃金が上がることになり、日本人全体の所得を底上げすることにつながります。
また、給料が上がって消費が更に活性化すれば、デフレを脱してインフレになります。
需要が増えることによるインフレはディマンドプルインフレと呼ばれ、経済が好循環する良いインフレ。
ディマンドプルインフレにより物価が上がるようになれば、日銀(日本銀行)による金融緩和政策の出口も見えてきます。
更に経済の好循環が続けば、法人税や所得税の税収が増え、結果的にPB(プライマリーバランス)黒字化も達成できる可能性があるでしょう。
日本の安定財源は自国通貨建ての国債
消費税を廃止するには約24兆円のお金が必要になります。
どこにそんな財源があるのでしょうか?
それは国債です。
国債をこれ以上発行すれば、日本は財政破綻(デフォルト)すると反対する方がいます。
しかし、下記記事で解説した通り、自国通貨建ての国債を発行できる日本が財政破綻(デフォルト)することはありません。
よって、3~4%程度のインフレ率になるまでは国債を発行して財政出動することでデフレ不況を脱する必要があります。
自国通貨建ての国債を発行している国の財政破綻(デフォルト)はないので、国債残高を考慮する必要はなく、インフレ率を目標に財政出動すべきです。
どこかを削ってどこかに付けるという財源論を繰り返している限り、日本は豊かになりません。
高齢者の予算を削って若者のために使うべきなどと、「若者VS高齢者」の対立を煽ってもより経済が低迷するだけ。
日本国民は「金持ちVS庶民」などのルサンチマンを煽られ、本質的な議論から目を逸らされてきました。
ルサンチマン(Ressentiment)とは?
セーレン・キェルケゴールが提唱した哲学的概念で、弱者や不幸な人々が他者や強者に対して持つ憎悪や嫉妬によって自己を正当化しようとする心理メカニズム。
税収で足らなければ、国債を発行すればいい。
プライマリーバランスの黒字化という奇妙な目標を掲げている先進国は日本だけで、その結果が「失われた30年」をもたらしました。
国民も問題の本質に目を向け、政治家を選んでいかないと失われた30年が失われた40年になってしまいます。
まとめ
どこかを減らしてどこかを増やすという一見正しく思える発想から脱却する必要があります。
議員だけでなく公務員の数を減らせという声も多いですが、下図の通り、世界と比較すると日本の公務員数は少なく増やすべきレベルです。
(出典:図録▽公務員数の国際比較)
安易な意見に煽られないように気を付けるべき。
国会議員や公務員を減らしても日本が豊かになることはありません。
もっと本質的な部分に目を向ける必要があります。
約30年間も日本の国力を削り続けてきた政治家には大きな責任があります。
これまで進めてきた緊縮財政で経済が好転しないのであれば、他国の事例などを参考に政治家が政策を転換すべき。
約30年間、国民を不幸にし続けてきたわけですから日本の政治家は万死に値するといっても過言ではないでしょう。
しかし、その頼りない政治家を選んでいるのは我々国民。
実は、我々国民が自らを苦しめる緊縮脳を持った政治家を選んでしまっているということ。
私たちは「国会議員を減らせ」という安易な意見に飛付くのではなく、もっと本質的部分に目を向けて政治家を選ぶ必要があります。