最近、「つみたてNISAとiDeCo(イデコ)のどちらを優先すべきか?」という質問をよく頂きます。
どちらも積立投資を活用した制度ですが、詳しい違いが理解できずにどちらを活用すべきか悩んでいる方も少なくないでしょう。
私の結論は、余裕があるのであれば両制度をフル活用するのがベスト。
しかし、フル活用する余裕がない場合、どちらを優先すべきかは、その人の状況によるというもの。
残念ながら全ての人に当てはまる絶対の正解はありません。
どちらを優先すべきかを考える上で、両制度の押さえておくべき違いを理解していることが重要です。
そこで今回は、つみたてNISAとiDeCoの押さえておくべき4つの違いと、両制度の活用法について解説します。
つみたてNISAかiDeCoのどちらを活用すべきか迷っている方は参考にしてください。
つみたてNISAとは?
まずは簡単につみたてNISAとiDeCoについて解説します。
つみたてNISAとは、2018年1月からスタートした長期の積立・分散投資を促進するための税制優遇制度。
通常、投資信託の売却益や分配金には20.315%の税金がかかりますが、つみたてNISA口座を活用することにより非課税となります。
つみたてNISAの毎年の非課税投資枠は40万円、非課税期間は最長20年間、最大の非課税投資枠は800万円。
投資可能期間は2018年~2042年です。
つみたてNISAの対象商品は、一定の条件を満たして金融庁に届け出された投資信託とETF(上場株式投資信託)に限定されています。
具体的な対象商品は、インデックス型の投資信託が185本、アクティブ型の投資信託が23本、ETF(上場株式投資信託)が7本の計215本。
上記の対象商品は随時、見直しが行われています。
個人型確定拠出年金iDeCo(イデコ)とは?
個人型確定拠出金iDeCo(イデコ)は、確定拠出年金法に基づいて運用されている私的年金制度。
公的年金(国民年金・厚生年金)の上乗せとして活用できます。
掛け金の拠出時は、掛け金全額が所得控除の対象となり、運用時の運用益は非課税となるなどの税制上の優遇措置があり、活用するメリットが大きい制度です。
一方で、運用に関しては元本保証はありませんので、元本割れする可能性がある点には注意が必要。
確定拠出年金iDeCo(イデコ)のメリットやデメリットなどについては、下記記事で解説していますので、ご参照ください。
NISAとiDeCoの押さえておくべき違いとは?
つみたてNISAとiDeCoを活用するうえで、押さえておくべき両制度の違いについて解説します。
iDeCoの掛金は60歳まで引き出せない
iDeCoの掛金は拠出時に全額が所得控除になるというメリットがある一方で、その資産は60歳まで引き出すことができません。
iDeCoは公的年金の上乗せという目的があるので、積み立てた資産を老後資金以外の目的で簡単に引き出せないようになっています。
つまり、iDeCoに掛金を拠出してしまうと、教育資金や住宅購入資金として使いたいと思っても、原則60歳までは引き出すことはできません。
一方、NISAはいつでも現金化が可能。
老後資金だけでなく、教育資金や住宅購入資金などとしても自由に活用できます。
iDeCoは毎月手数料がかかる
iDeCoは掛金拠出時だけでなく、運用のみの場合でも毎月手数料がかかります。
例えば、iDeCoの掛金拠出が苦しい場合には拠出を止めて、それまでに拠出した資産の運用のみを行うことができます。
しかし、掛金の拠出を止めて運用のみを行うケースでも毎月の手数料はかかります。
つみたてNISAは積立時も積立をストップしたとしても手数料はかかりません。
つみたてNISAは100円から・iDeCoは5000円から
証券会社によりますが、つみたてNISAは100円から始めることができます。
一方、iDeCoは月5000円から。
金額的には、つみたてNISAの方が気軽に始めることができます。
iDeCoの出口戦略は難しい
上記の通り、iDeCo(イデコ)は掛金の全額が所得控除の対象となり、所得税・住民税の負担を軽減でき、節税効果があります。
しかし、積み立てた資産を老齢給付金として受け取る際には非課税ではなく、課税の対象。
iDeCo(イデコ)の老齢給付金は、下記の受取方法を選択できます。
- 一時金
- 年金
- 一時金と年金の併用
一時金で受け取る場合も年金で受け取る場合も、どちらも課税の対象となります。
iDeCo(イデコ)は受け取り方によって課税される税金の額が大きく異なる可能性があるため、受給時には課税関係について注意する必要があります。
特に、公的年金や退職金、小規模企業共済などとの絡みを考慮することが重要。
また、iDeCo(イデコ)で難しいのが「出口戦略」。
iDeCo(イデコ)で積み立てている資産を受け取りまでにどのような資産配分にしておくかを考えておく必要があります。
例えば、掛金の全てを株式型の投資信託で積み立てている場合、受取の際にコロナショックのような大暴落が発生すると、受取額が大きく減ってしまします。
よって、iDeCo(イデコ)は受給時に向けて計画的に資産配分の変更(リアロケーション)を行うことが重要。
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「つみたてNISA」であれば、資産を取り崩す際に株式市場が大暴落していても、取り崩しを先延ばしにし、運用を継続することが可能。
しかし、iDeCo(イデコ)の場合は、上記のように受け取り方によって課税額が変わるので、受給の時期を先延ばしにできない可能性も。
仮にiDeCo(イデコ)を60歳で受け取ると決めるのであれば、60歳に向けて資産配分を元本確保型の定期預金や保険などにリアロケーションしておく方が無難でしょう。
なお、iDeCoの受取時に積み立てた資産を現金化せず、そのまま課税口座に移せるような改正があれば、出口戦略も簡単になるのですが・・・。
つみたてNISA・iDeCoともにフル活用するのがベスト
冒頭で書いた通り、つみたてNISAとiDeCoのどちらを活用すべきかと聞かれれば、どちらもフル活用するのがベストです。
しかし、両制度をフル活用する余裕がないのであれば、自身の状況と制度の違いを理解して、どちらを活用するべきかを検討すべき。
例えば、専業主婦(夫)などの所得控除の恩恵がない方については、iDeCoを利用するメリットは小さいので、つみたてNISAを優先的に利用するのがいいでしょう。
また、60歳まで資産が引き出せないことに不安があるのであれば、つみたてNISAから活用するという考え方もあります。
理解すべきことは、両制度の活用方法について万人に共通する絶対の正解はないということ。
自身の状況と両制度の違いを理解しつつ、活用して頂ければと思います。
まとめ
つみたてNISAとiDeCoのどちらを活用すべきかと聞かれれば、どちらもフル活用するのがベストです。
しかし、両制度をフル活用する余裕がないのであれば、自身の状況と制度の違いを理解して、どちらを活用するべきかを検討すべき。
特に注意すべき両制度の違いは、下記の通りです。
- iDeCoの掛金は原則60歳まで引き出せない
- iDeCoは毎月手数料がかかる
- つみたてNISAは100円から・iDeCoは5000円から
- iDeCoはNISAに比べて出口戦略が難しい